嵐山町web博物誌・第1巻「嵐山町の動物」
第2章:森や林の主な動物たち
第1節:森林の動物と四季の変化
15.落葉下、地中で見られる小さな動物たち
雑木林の林床を垂直に切り取ってみると、一般的には上から落ち葉の層、腐葉土の層...全文
雑木林に見られるたくさんの動物たちにも、とうぜん寿命があります。肉食のものに食われたり、病気で死んでしまったりするものもいるでしょう。また、すべての動物は排泄物(フンなど)を出します。ですが、林の中はフンや死骸であふれかえることは決してありません。それは菌類やバクテリアなど分解者の働きがあるためですが、昆虫類やミミズなどが食べて細かくする働きも大きいようです。林の落葉中にはこうしたものを含め、ひじょうにたくさんの動物が見られ、枯れた植物を細かくしたり菌類を食べたりしています。ここではそんな動物たちを紹介しましょう。
林の中で見られるフン虫の仲間には、センチコガネ以外にもエンマコガネ類やマグソコガネ類などが見られます。雑木林で良く見られるのは
クロマルエンマコガネ(1)
コブマルエンマコガネ(2)
ツヤエンマコガネ(3)
マグソコガネ(4)
などです。
- ヤスデは自然界の中では、腐葉や菌類を食べる分解者です。大型のタカクワヤスデ(写真)などは、軟らかくなった落葉を大量に食べ、食べかすをフンとして排出し、有機質を多量に含んだ土粒をつくります。その働きは、ミミズと同様に重要であると思われます。
COLUMN
土の中にどれだけ生き物がいるか
雑木林の林床には、実に様々な生きものが生活しています。どのくらいの種類数がいるのか、甲虫類を例にあげてみましょう。嵐山町内で甲虫類925種が記録された調査では、このうち土壌から採集されたものが105種、さらにこの中で土壌のみから得られたのは68種でした。この数字だけ見ても、土壌には全体の1割くらいの種類が生息していることになります。この数字を動物全体に当てはめることは出来ませんが、ダニやトビムシなど小さな生きものの多くは土壌中に生息し、多足類やカニムシ類なども良く見られます。ですから実際には1割と言わず、もっと大きな割合を占めるのではないでしょうか。
雑木林の林床にすむ生きものたちは、冬になると崖のような場所にもぐりこんで越冬します。オサムシやカメムシの仲間、あるいはムカデの仲間などが見られ、場合によってはたくさんの数が同じ場所にかたまってもぐりこんでいる事もあります。 雑木林と言えば、冬の季節、カサコソと音をたてる落ち葉を思い出される人も多いことでしょう。その積もった落ち葉や朽ち木の下には、春から秋の頃にかけてアオオサムシやエサキオサムシなどのオサムシ類や、淡い赤褐色の美しいコベソマイマイ、またニッポンマイマイやヒメビロードマイマイなど、たくさんの種類のカタツムリが見られます。前のページで紹介したような小さな生きものも同様の場所にすんでいます。落ち葉は、これらの動物たちにとって大事な生活の場なのです。また、林縁にある崖などは、こうした動物たちが寒い冬を過ごすための場所となっており、地中に潜り込んで冬越しを行います。
ツルグレン装置
「ツルグレン装置」は、落葉や土壌の中に生息する生きものを調べるための装置です。土壌中にすむ生きものたちの“光や熱、乾燥を嫌がる性質”を利用したもので、落葉枝や腐葉土を装置に設置して上から光を当てることにより、中から小型の生きものを抽出することができます。 拡大画像
ツルグレン装置で抽出された土壌中の小動物。目に見える大きなものから、顕微鏡でみなければわからないようなトビムシ、カマアシムシのようなものまで、大量に含まれています。目に見える昆虫類ではハネカクシ等の甲虫類や小さなハチ、アリ類が多く、カメムシ類も目立ちます。多足類では、土中に生息するジムカデ類や小型のイシムカデ類、アカムカデ類、ヤスデ類の幼虫等がよく得られます。サソリのようなハサミを持つ可愛らしいカニムシ類も見つけることができます。
大学の研究室に設置されたたくさんのツルグレン装置。生きものの抽出は48時間くらいかけて行います。落ちた生きものは下に設置されたビンの中にたまります(協力:東京農業大学)。