嵐山町web博物誌・第1巻「嵐山町の動物」
第2章:森や林の主な動物たち
第1節:森林の動物と四季の変化
3.樹液で見られる動物たち
昼
樹液がたくさんしみ出ているクヌギがありました...全文
昼 カミキリムシなどがコナラやクヌギの樹皮に傷をつけると、そこから樹液がしみだしてきます。この樹液をなめに来たいろいろな虫たちが、さらに樹皮を傷つけると、そこに大きな樹液場が出来あがります。雑木林の中をよくさがしてみると、こうした木があちこちに見つかります。樹液に集まる虫の中には、大人気のクワガタムシやカブトムシも含まれます。それで夏になると子供たちは、自分だけの樹液場を見つけようとして山の中をさがし歩くのです。
昼間の樹液場で特に目につくのはスズメバチの仲間です。樹液に集まる虫の中では最強で、樹液をなめるほかにも付近でカナブン類などを狩ったりもします。オオムラサキやサトキマダラヒカゲなどのチョウ類、カブトムシやケシキスイ類などの甲虫、ホシアシナガヤセバエやヤマトアブなどのハエ・アブ類もやはり昼間に多いようです。
何年も樹液が出続けている木は、その部分がコブのようにふくらんできます。樹皮に出来るすき間も多くなり、カナブンやクワガタムシがもぐるのにはちょうど良いようです。
樹液時間割り表
昼間に見られることの多いノコギリクワガタ。大きなオスでは立派な大アゴをもっています。これを地元では「ノコギリッパ」と呼び、小さいオスは区別して「コオロギッパ」と呼んでいます。あまりにも見た目が違うので、一見別種であるかのようです。
夜
昼間に場所を確認しておき、真っ暗になってから出かけてみました...全文
夜
夜の樹液は、昼間とは違った顔ぶれが登場します。クワガタムシも昼間は寝ていることが多いようですが、夜になると這い出してきて活躍します。嵐山町あたりでは「オニムシ」とも呼ばれ、スジクワガタ、コクワガタ、ヒラタクワガタ、ノコギリクワガタ、ミヤマクワガタの5種類が確認されています。また樹液に集まるガの仲間の多くは、夜間に活動し、特にフクラスズメが多く見られます。懐中電灯で樹液を照らすとこれらのガがたくさん集まってきます。他にもカミキリムシの大型種やヘビトンボなど、夜に活動するものもたいへん多いようです。
「ジュウバコ」という地方名は、オスの頭部の形態を、食べ物を入れる重箱に例えたもののようです。ミヤマクワガタは埼玉県内では山地に多く、嵐山町でも山沿いの地域や北部の谷津田周辺で少ないながら見ることができます。
コラムCOLUMN
木の根元を掘ると樹液が出なくなる
今から20年も前にはクワガタムシも数がたくさんいたので、早起きして樹液を見にいけばいくつも採れたものです。ところが最近はなかなか採れないのか、早起きするのがつらいのか、昼間根元で休んでいるクワガタムシを掘りおこして採る人が目立ちます。実はこのことで、雑木林に深刻な問題がおきています。根っこを掘ったままで帰ってしまい、その結果として木が弱り、樹液が止まってしまうのです。ひどいときには木そのものが枯れてしまうこともあります。そうなればクワガタムシはおろか、カブトムシやオオムラサキでさえもいなくなってしまいます。そこでお願い。もし根もとの虫を探すとしても、せめて掘った後は埋め戻してもらいたいのです。そうすればきっと、またたくさんのクワガタムシが見られるようになるはずです。