嵐山町web博物誌・第7巻【祭りと年中行事編】
第1節:春を待つ
野佛の掌に載る春の雪 千代田恭子
暦の上では春になったとはいえ、まだまだ寒さ厳しい二月です。上着を脱ぐほど温かい日が続いたかと思うと、突然の大雪に驚かされたりします。それでも、梅のつぼみは早くもほころび始めました。つがいのメジロが、品定めをしながらついばんでいます。明るさを増した陽射しを受けて、ネコヤナギの花穂が銀色に輝きます。春はすぐそこまでやってきているのです。
この月に行われる節分、初午、八日節句は、厄よけ、魔除けの行事です。人や家に取りつく悪いものは、早いうちに払ってしまうに限ります。そして、これから一年の無病息災と、作物や蚕のつつがない育ちを祈ります。お不動様やお稲荷様は、今年もしっかりと見守ってくださることでしょう。
1.天神講(てんじんこう)|村の行事
天神講は埼玉県内では一月二十五日に行われる所が多くみられます。天神様は菅原道真(すがわらのみちざね)を祀(まつ)っています。菅原道真は文道の大祖(たいそ)とか文字詩歌の神とあがめられ、子供たちが行う天神講は文字が上手になるようにという目的が主要なものになっています。嵐山町の天神講は一月の二十四日から二十五日にかけての所もありますが、十二月二十四日から二十五日にかけての学校の冬休みの間などと色々です。天神講に参加できるのは、戦前は小学校一年生から高等小学校二年生(現在の中学校二年生)までで、戦後は中学三年生までになりました。子供たちは御馳走をいただき、上級生は宿(やど)に泊まって、皆で遊ぶということが楽しみの中心であったようです。
天神講は昭和四十年前後まで行われていたようです。
子どもたちの一日
【春を待つ風景】
天神講では、上級生の家に男の子も女の子も米を持って集まり、宿の人に五目ご飯にけんちん汁などを作ってもらい、みんなで食べます。紙に「奉納 天満天神宮」と書いて旗を作り、その後は、寝るまで、いろんな遊びをして過ごします。夜が明けると、みんなで自分で作った旗を持ち、近くにある天神様に奉納します。