嵐山町web博物誌・第7巻【祭りと年中行事編】
COLUMN
7.コラム:埼玉県内の初午
お稲荷さんのはなし
お稲荷さんといえば狐(きつね)です。狐は現在身近に存在していないものの、狐の嫁入りとか、きつねうどんなど、狐という言葉そのものはよく聞きます。また、お稲荷さんは狐であると同時に、稲荷社のことでもあります。稲荷社は全国で最も多く祀られている神社で、五穀豊穣(ごこくほうじょう)を祈る神様、商売繁盛の神様、特に埼玉県では養蚕との関わりもみられます。個人の屋敷神として祀られることも多くあります。近世には江戸では「伊勢屋・稲荷に犬のくそ」といわれ、稲荷社が数多くある代名詞にもなっていました。
初午のはなし
埼玉県内では広く初午の行事が行われます。二月初午、月遅れの三月初午に分かれています。地域により行事の内容は異なります。
埼玉県東南部では、子供たちが初午の前の晩小屋を作り、お籠(こも)りをしました。また、お焚き上げといい、小屋の前で薪を燃やしたりもします。この東南部を中心にスミツカレという食べ物を作るのが、この地域の初午の特徴でもあります。特に、年占(としうら)の弓を射る行事であるオビシャとの関わりが深い地域は藁(わら)で蛇体(じゃたい)を作り、社殿にかけたりして、稲作の豊穣(ほうじょう)を祈願します。
それに対して、児玉郡、大里郡、秩父郡などの初午は養蚕の信仰とのつながりが強く、小正月のオシラ様の繭玉と同じものを作ったりします。