嵐山町web博物誌・第7巻【祭りと年中行事編】
第4節:夏越し
鉦たたき大数珠廻す夏祓 大塚清子
人の体には、知らぬ間に疫病やら災厄やらが取りついているのだそうです。少しずつ、少しずつ、穢(けが)れがたまっていくそうです。それが害悪をもたらすのだ、と昔の人は信じていました。
夏は、食べ物はすぐに腐ってしまうし、かつては思わぬ伝染病が広がって苦しめられました。暑気あたりも、あるいは悪魔の仕業かもしれません。疫病祓いをし、一年を無事乗りきるための夏越しの行事には、はるか昔からの人々の切実な思いが積み重なっています。
村境の木を見上げると、真新しいフセギが吊されていました。もう、一年の半分が過ぎようとしています。疫病の侵入を食い止めてくれるという大きな草鞋に「今年も頼むね。」と小さく声をかけました。
1.フセギ|村の行事,現在の行事
フセギは、春から夏にかけて伝染病などの悪病が流行しないようにと村境にお札や藁で作った龍などの作りものを立てかける行事です。村境に立てるのは、こうした悪病が村内に入って来るのを防ぐ意味があります。
杉山では大きな三ツ目の龍を市野川沿いの村境に立てかけました。各家には小さなものが配られ玄関先に吊されます。
かつては根岸でも藁で作った馬のワラジとマラ(男根)を竹につけて立てたということです。