嵐山町web博物誌・第7巻【祭りと年中行事編】
収穫祭
ささら獅子頭に挿せる花芒 野崎ゆり香
黄金色の田が、まるでさざ波を打つ海のように、静かに揺れています。とうとうこの日がやってきました。ずっしりと重い稲穂を両腕いっぱいに抱え、喜びをかみしめます。篠つく雨の中でも、むせ返るような炎天の日も、黙々と積み重ねてきた地道な努力が報われました。また来年も、と意欲と気力が沸き上がってくるのです。あまたの苦労も、この日を境に思い出話に変わります。
豊作を祝い、神に感謝する秋祭り。今年も晴れやかな顔が揃いました。
1.月見|家の行事,現在の行事,畑作の行事
旧暦八月十五日は十五夜、九月十三日が十三夜で、月見を行います。月見は、薄(すすき)や十五夜花(じゅうごやばな)を瓶(びん)に立て、団子やまんじゅう、それに秋の収穫物の柿・栗・里芋・さつまいもなどといっしょに箕に入れて縁側へ供えます。供え物は「盗まれると縁起(えんぎ)がよい」といわれ、子どもたちが盗みにいったものでした。供え物が盗まれることはお月様(神に見立てる)へ進ぜることに通じ、豊作につながるものととらえていました。むかしから、「片月見はいけない」とされ、十五夜を行えば必ず十三夜も行いました。なお、「十五夜に月見ができれば大麦、十三夜に月見ができれば小麦が当たる」といい、月見で翌年の麦の出来具合を占ったものです。
十五夜の夜
【収穫祭の風景】
旧暦八月十五日の晩は、十五夜とか中秋の名月と呼ばれています。通常この時季になると空気も澄み、秋の夜空の月見が堪能できるというものです。しかし、満月は十五日とは限らず一、二日ずれることがあります。
この晩、西南日本を中心に綱引きが行われます。地域を東西に分け、東が勝てば豊作、西が勝てば大漁と占うなど、豊かな生産を熱望する気概が窺えます。
今のように時間を計る道具が普及する以前は、月の満ち欠けによって月日の推移を計り、満月までを1か月と定めたといいます。
中秋の名月で月見を行う風習は中国から伝わったものといわれていますが、今ではすっかり定着した感があります。
また、わが国には月待といって、ムラの人々が大勢集まって月が出るのを祭る行事が行われる場所もあります。たとえば、十三夜・十七夜・二十夜・二十三夜などで、これには女の人が中心となるところが多く見られます。
このように、月はわたしたちの生活と深くかかわっています。