嵐山町web博物誌・第7巻【祭りと年中行事編】
6.大般若の転読|村の行事,現在の行事
広野の広正寺(こうしょうじ)では四月八日の花祭りに大般若の転読が行われます。大般若経は六百巻あり、転読とはそれらの経巻をぱらぱらとめくることで全巻を読んだと同じ意味になります。この風にあたると一年間病気にならないというご利益があるといわれ、信者は、僧侶(そうりょ)の読経(どきょう)にあわせて堂内を回り歩きます。この時のお札は笹竹につけて村境に立てられます。
吉田の宗心寺(そうしんじ)でもかつては三月二十八日に大般若の転読が行われていました。
また、埼玉県東南部を中心に大般若経を箱に入れ、神輿(みこし)のように担いで、一軒一軒廻るところもあります。
大般若経
【春を祝う風景】
大乗仏教(だいじょうぶっきょう)の初期の教典で、空を説く般若経典類を集大成したものです。大般若経を転読する法会を大般若経会といい、古来、国家鎮護(こっかちんご)のために東大寺、薬師寺、興福寺(こうふくじ)などで盛んに行われてきました。宮中でも春と秋の二回行われました。江戸時代には埼玉県内の寺でも盛んに行われました。大般若経転読会は、各巻の初め七行、中程五行、終わり三行を読みます。
■三郷市番匠免(ばんしょうめん)の大般若
この祭りは7月第一日曜日に行われます。最初に、迎摂院(げいせついん)の住職が神明神社で、大般若経の転読を行います。それから、教典を六個の木箱に入れ、住職が木箱をお祓(はら)いしてから、木箱を担いで番匠免の各家を回り、それぞれの家に入り厄払(やくばら)いをします。その後に住職が玄関で大般若の転読をします。決まった宿の家や迎摂院では、木箱を神輿のように激しくもみます。木箱をしばった綱は切れると、取って置き、後に各氏子に分け、その網は魔除けとして玄関に付けられます。