嵐山町web博物誌・第7巻【祭りと年中行事編】
4.恵比須講|家の行事
旧暦十月二十日は恵比須講で、埼玉では全県にわたって行われています。新暦では、月おくれの十一月二十日に行うところが多くみられます。恵比須講は正月と秋の二回行われます。正月の恵比須講で出稼ぎに行った恵比須様がこの日帰ってくると伝えられる地域が大半ですが、なかには秋の恵比須講に出稼ぎに向かうといわれている場所もあります。この日はザシキか床の間にちゃぶ台を置き、さんまの尾頭付きや小豆めしか天こ盛りのご飯、汁、それに一升ますに有り金を入れて供えます。こうした供え物は、箕(み)に入れる家もあります。また、「たくさんかっこめ」という願いを込めて熊手を供えます。恵比須講の日は金を使ってはいけないといわれていました。
恵比寿様
【冬の祭りの風景】
恵比須様は海の彼方から流れ着いた神霊で、漁村では漁師が豊漁を祈り、船乗りは航海の安全を祈願して祀ったものでした。
都市では大黒様とともに商売繁盛をもたらす福の神として商家で信仰されるようになり、講を組織し、毎月一〇や二〇の日を日々の祭日といたしました。
恵比須様のはなし
恵比須様は家々の生業を守り、福徳をもたらす神として古くから信仰され、大黒様とともに代表的な福神と目されてまいりました。ふだんは家の台所や茶の間に祀られておりますが、恵比須講の日はちゃぶ台を出し、座敷や床の間に飾られます。
正月の恵比須講は商人の祭りで、秋の恵比須講は農家の行事であるというとらえ方もあります。
また、東日本の農村では恵比須様がカマド神や荒神様(こうじんさま)と習合し、稲の豊作をもたらす神としての性格を備えると考えられています。田植え終了後のサナブリに稲の苗を、刈り上げには稲穂を恵比須様へ供えるのは、こうした考えに基づくものでしょう。