嵐山町web博物誌・第7巻【祭りと年中行事編】
COLUMN
2.コラム:十日夜と亥の子
周辺地域の亥の子・十日夜
旧暦十月十日が十日夜、その前日が亥の子で、いずれも子どもたちが地面をたたく行事です。このうち、十日夜は東日本、亥の子は西日本に分布するという地域性が認められます。
埼玉県は、東日本の十日夜分布圏に属しますが、一部に亥の子を伝える地域もみられます。しかし、伝承の限りでは西日本にみられるようなイノコツキは行わず、ぼた餅を作るのみとなっています。地域的には、入間・比企に多くみられる点が注目されます。亥の子でぼた餅を作るところでは、十日夜には何も作らないか、うどんやそばという家が多くみられます。
近県の十日夜
晩秋の静かな農村を一夜だけにぎやかにさせる十日夜は、埼玉・群馬・長野・山梨周辺に所在しています。群馬県では、田から藁ニュウを庭へ運んで立て、ニュウガミ様として祀り、餅や大根を供えます。この日は、「大根の年取り」といいます。ほかに、案山子(かかし)を田から運んで餅を供えたり、蛙餅(かえるもち)といって蛙に餅を供える地域もあります。また、十日夜かその前日に、近くの山へ登拝する地域が多くみられます。登る山は地区ごとに決まっていて、山頂の十日夜の祠(ほこら)(山の神か)へ米ととうもろこしのシトギを供え、山遊びをして帰ったといいます。この習俗は、ムラの人びとが田の神を送るために山へ登るものと考えられます。
西日本の亥の子
イノコツキ(亥の子つき)は、旧暦十月の亥の日に行われる行事で、近畿以西の西日本に多く分布します。この日、子どもたちが亥の子石と呼ぶ丸い石に何本もわら縄をつけて石をつり、ムラの各家を訪れて庭先で亥の子石につけたわら縄を周りから引き上げてから、地面に打ち下ろします。このとき、「イノコ、イノコ、イノコモチツイテ・・・」と口づさみながら、この動作を何回も繰り返すさまは、さながら地を固めるようです。