嵐山町web博物誌・第5巻「嵐山町の中世」
6.出土遺物は語る
製品や操業の様子が見えてきます。
鋳型からわかる金平遺跡でつくられたもの
出土した鋳型はいずれも破片です。これは製品をとり出す際に鋳型が壊されるためで、残念ながら粉々になった破片からどういう製品のどの部分の鋳型なのかわかるものは多くはありません。
- 仏像
- (向徳寺蔵)
- 仏像鋳型
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(金平遺跡出土)
如来立像の下半部分の破片で、裳(も)の部分が美しい曲線でかたちづくられています。残存部からの推定で高さ30cmほどの仏像であったと思われます。
- 梵鐘模式図
- 『梵鐘と古文化』より
- 梵鐘鋳型
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(金平遺跡出土)
梵鐘の鋳型は30点出土していて金平遺跡全体で3〜4口の梵鐘が鋳込まれたようです。鋳型の部分は上が梵鐘を釣り下げる竜頭の部分、下が下半の中帯〜駒ノ爪と呼ばれる部分です。
- 磬架(けいか)(右)
- (奈良県奈良市唐招提寺蔵・奈良国立博物館提供)
- 磬鋳型(左)
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(金平遺跡出土)
読経の際に僧侶の横に置かれ、お経の間に打ったりする梵音具(ぼんおんぐ)です。2か所に紐(ちゅう)がつき、磬架という木枠に吊されるものです。
鋳造を物語る遺物
鋳型以外にも金平遺跡からは普通の遺跡からは出土することのない独特の遺物がたくさん見つかっています。
鋳造に使った工具類や原材料などから、どのように鋳造を行ったのか、わずかにかいまみることができます。
- 飾り金具鋳型
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(金平遺跡出土)
同心円状に3段にくぼんでいる飾り金具で、釘などの目隠しに使われたと思われます。 - 飾り金具(釘目隠し)
- 大蔵 向徳寺山門
- 鉄鍋鋳型
- (金平遺跡出土)
- 鉄塊(てっかい)・銅塊(どうかい)
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(金平遺跡出土)
製品の原材料となる鉄や銅がどのような形で生産地から金平遺跡へ運ばれてきたのかははっきりしません。工場跡からは1〜2cm程の鉄塊系遺物と呼ばれる鉄の塊がたくさん検出されました。このような小さな塊で運び込まれたのかも知れません。 - ハタマワシ
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(金平遺跡出土)
鉄製のヘラ状をした工具で明治時代の鋳物工場でもこれと同じかたちの物が使われていました。鋳型を仕上げる際に型の角を整えるために使われました。 - ハタマワシ使用図
- 『倉吉の鋳物師』(原画を加工)
- 鉄湯口
- 湯口部に余分に流し込まれた部分は貴重な原材料として再び溶かしてしまうため通常遺跡から出土することはないのですが、金平遺跡からは大小20数個の鉄湯口が出土しています。
- 飾り金具鋳型の湯口部分
- (金平遺跡出土)
- 湯口(ゆぐち)部模式図
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『倉吉の鋳物師』(原画を加工)
鋳型に融けた鉄や銅を流し込む口を湯口と湯道といいます。鋳込みの際にはこの湯口部分まで多めに流し込まれました。 - 鉱滓(こうさい)
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(金平遺跡出土)
鉄や銅を溶解する際には大量の不純物が排出されます。これが鉄滓や銅滓と呼ばれる(カナクソ)です。鋳造で排出される鉱滓はガラス質のものが多くみられます。 - 黒鉛化木炭
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(金平遺跡出土)
溶解の燃料には木炭が使われましたがこの木炭が溶解炉のなかで燃えずに、鉄分が入り込んでできるのが黒鉛化木炭です。