嵐山町web博物誌・第5巻「嵐山町の中世」
COLUMN
9.コラム:岩質を調べる
石造物がどこから運ばれてきたのかを知るためには、安山岩とか凝灰岩とか岩石の種類を見分けただけではわかりません。産地の岩石と同じかどうかを調べる必要があります。例えば凝灰岩とひとくちに言っても、その中に含まれている鉱物や火山ガラスの組織など、石の顔付きをよく観察して調べることが必要です。そこで、岩石学研究の助けを借りて、産地の石を顕微鏡などで細かく観察して、その特徴を調べます。
比企丘陵から産出される七郷層の凝灰岩にも、三つのタイプがみられます。源義賢の五輪塔は、火輪と水輪が極細粒粉状泥質で滑川町二の宮山頂に同タイプの凝灰岩が露頭しています。また、地輪は粗粒軽石質で福田石と同タイプです。
こうした地元の比企丘陵でとれる石材と比べると、群馬県笠懸町の天神山の岩石は同じ凝灰岩でも、全く異質な顔付きをしています。バブル型という湾曲板状をした白色細粒ガラス質のきわめて個性的な石です。
天神山から約3キロメートルほど離れた新里村の石山(いしやま)から産出された凝灰岩は、同じ岩層に入り、見た目は天神山によく似ていますが、ガラス質の組織が繊維状の軽石型タイプが主になるので、顕微鏡で観察すると見分けられます。
天神山の石材を含んでいる馬見岡(まみのおか)凝灰岩層は、比較的狭い範囲にしか分布していないことと、特徴がはっきりした石であることから産地同定の研究が進んでいます。