嵐山町web博物誌・第3巻【地質編】
5.岩殿丘陵の火山灰層
岩殿丘陵の火山灰
嵐山町南部の岩殿丘陵に分布する岩殿層は、年代的に比企丘陵の福田層に相当します。福田層は火山灰質の泥岩ですが、岩殿層も非常に火山灰質で、連続してつながる火山灰層が13枚挟まれます。
*1:葉理(ようり)…地層中で肉眼的に観察できる最小の層のこと。一般的には、堆積物の粒径の大小、鉱物組成の違い、色の濃淡などの違いによって、葉理として識別されます。
*2:平行葉理(へいこうようり)…1つの地層(単層*3)の中には、地層面と平行に並ぶ葉理や斜めに並ぶ葉理が見られます。地層面と平行なものを「平行葉理」、斜めのものは「斜交葉理」と呼びます。
*3:単層(たんそう)…単層は、同じ作用の堆積によって作られた地層です。上下の単層は異なる堆積の仕方となります。単層の境目は地層面(層理面)と呼ばれ、地層面は水平面であることが多い。
この凝灰岩層は岩殿丘陵に広く連続して分布していて、地層を同定するのに有効で、地質図を描くときに役立つ地層です。この様な地層を「鍵層」と呼んでいます。
岩殿丘陵では岩殿観音として知られる正法寺の崖に、この将軍沢凝灰岩層が見られます。
火山豆石(かざんまめいし)
嵐山町に分布する岩殿丘陵の凝灰岩層の一つに奥田凝灰岩層があり、この中には火山豆石が見られます。
次の露頭は地球観測センター(鳩山町)の入口付近の崖です。奥田凝灰岩層は厚さ15mで、海底に大量の火山灰が堆積してできた地層です。
この凝灰岩を崩してみると、透明な石英や黒色で六角形の黒雲母などが見られます。この凝灰岩に含まれるジルコンという鉱物を詳しく調べた結果、今から約1200万年前に堆積した地層であることがわかっています。
奥田凝灰岩の中に含まれるこの火山豆石は、火山灰でできた小さな丸い塊です。
直径1cm以下のものが多いのですが、時には数cm程のものもあります。断面は同心円状の層が見られることがあります。
火山噴火の噴煙に含まれた水や雲粒などの表面張力や火山灰粒子の静電気力などで凝集してできたという説や、堆積した火山灰中に水滴が落下転動して生じたという説があります。
- 奥田凝灰岩層
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鳩山町の地球観測センターの入り口付近に露出する奥田凝灰岩層。
ここでは厚さ約15mの凝灰岩層が観察できます。成層構造が見られ、下半部には火山豆石が多数含まれる部分があります。
中上部にはコンボリュート葉理が発達している部分もあります。 - 奥田凝灰岩に見られる火山豆石
- 奥田凝灰岩の下半部には二層準にわたって写真のような丸い火山豆石が含まれる部分があります。
- 火山豆石の拡大写真
- 火山豆石を割って断面を見ると同心円状の構造が見られます。雨滴を核として内側から外側へとできていったものと考えられています。
- 火山豆石
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奥田凝灰岩層は固結が進んでおらず、軟らかいので火山豆石を地層から取り出すことができます。
取り出すとコロコロとした豆粒のような形をしています。