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嵐山町web博物誌・第3巻「嵐山ジオロジア」

第3節:海が広がった時代

1.亜熱帯の海の生物たち

地質年表
地質年表
約1600万年前の海底に堆積した地層には、熱帯〜亜熱帯の海に棲む貝類やサンゴ、有孔虫(ゆうこうちゅう)などの化石が数多く含まれています。
この中では、貝類の化石が特に多く「門の沢動物群」と呼ばれているものにあたります。

嵐山町近辺で、この時代に堆積した地層は小園層(こぞのそう)、小川町層などです。
ここからは、干潟に棲んでいた貝、カキ礁を造るような浅瀬に生息する貝、そして、それよりもやや沖合に棲んでいた貝の化石が見つかっています。

干潟に棲んでいた貝

タテイワイアとビカリエラの化石
タテイワイアとビカリエラの化石|写真
1:オオツカビカリエラの化石
2:タテイワイアの化石
34:ヤマナリタテイワイアの化石
57:イシイビカリエラの化石

現在の干潟の泥や砂の上には、ウミニナやカワアイガイなどの巻貝をよく見かけます。
小園層上部の中粒砂岩層からは、現在のウミニナに近縁のタテイワイアやビカリエラの化石も数多く発見されました。

タテイワイアやビカリエラはすでに絶滅していますが、現在のウミニナの様に、干潟の泥や砂の上で生活していたと推定されています。

タテイワイアとビカリエラの復元イラスト
タテイワイアとビカリエラの復元図

カキ礁を造っていた貝

アツガキの化石1|写真
アツガキの化石

現生のマガキは片方の殻を小石や貝殻などに固着しながら、河口近くの干潟で棲息しています。
死んだカキ殻の上には次の世代が育ち、次々と積み重なり大きな礁(カキ礁)を造るため、最も新しい世代は、川から運ばれる泥や砂に埋もれることなく生活できるのです。

1600万年前のクラスオストレア グラビテスタは、非常に殻が厚いという点を除けば、殻の形はマガキによく似ています。
小川町では硬い基盤岩の上に大きな礁を造った様子が観察できます。写真は小園層下部、小川町層で採集されたものです。

アツガキの化石
アツガキの化石1|写真 アツガキの化石2|写真
マガキ 現生標本
現生のマガキ|写真

沖合に棲んでいた貝

小園層中部から産出した貝化石
小園層中部から産出した貝化石|写真
:ユナガヤソデガイの化石
:メイセンタマガイの化石
:ヤナギダニヒタチオビガイの化石
:オオツカツキガイモドキの化石
:シオガママルフミガイの化石

小園層中部の泥質砂岩層や泥岩層からは、多くの貝化石が産出されます。これらの貝は、水深50m〜200m前後の沖合の砂泥質の海底に棲んでいました。

沖合に棲んでいた貝の復元図
貝の復元イラスト1 :オオツカツキガイモドキ/:シオガママルフミガイ
貝の復元イラスト2 :ヤナギダニヒタチオビガイ/左下:メイセンタマガイ/右下:ユナガヤソデガイ

小園層が見られる主な露頭

小園層は、石英や長石に富む中粒〜粗粒砂岩や礫岩から構成され、砂質泥岩も含まれます。寄居〜花園の荒川河岸や美里町の丘陵に分布しており、嵐山町では役場周辺の丘陵にわずかに見られます。

嵐山町役場周辺の小園層
嵐山町役場周辺の小園層|写真 役場の南に造られた道路の大きな切通しに、小園層が露出しています。
ここでは貝化石はまだ見つかっていません。
寄居の荒川右岸(赤浜)に見られる小園層
荒川右岸|写真 荒川河岸(寄居町赤浜)には小園層が露出しており、多くの種類の貝化石が見つかります。
左の橋は花園橋。
第3節:海が広がった時代