ページの先頭

嵐山町web博物誌・第1巻「嵐山町の動物」

第5章:人家周辺の主な動物たち

第1節:庭の生きものの世界

2.庭の果樹に見られる動物たち

 かつて食糧難にみまわれた時期、人々の空腹をいやし、とぼしい甘味の補給源として珍重された庭の柿の実。このごちそうも、食料が豊かとなり「飽食の時代」などと言われる近ごろでは、人々からとかく忘れられがちとなりました。しかし野生動物にとっては相変わらず季節の大ごちそうで、朝早くから夕方までいろいろな野鳥たちが、入れ代わりたちかわり訪れる場所の一つとなっています。よく見られる鳥としては、ヒヨドリ、メジロ、スズメ、ムクドリなどがあげられます。また熟れた実が落ちると、スズメバチやタテハチョウ類など、多くの昆虫が果汁を吸いに集まります。
 庭にある果樹では、梅もよく見かける木のひとつです。その実は古くから良く利用されてきました。しかしこの木にはいろいろなガの幼虫(毛虫)やアブラムシなどがつきます。
 他にも庭にはいろいろな果樹があります。ここでは庭で見られる果樹と動物の関わりについて、その一部を紹介します。

メジロの写真
熟した柿の実に集まる小鳥のなかで、昔から多くの人に知られ親しまれてきた鳥として、まずメジロがあげられます。本来は丘陵から低い山地の林にすむ鳥ですが、秋がくると人家周辺にやってきて、あちこちの家の柿の木を訪れるようになります。

 
  • ムクドリの写真
    春から夏にかけて多くの農業害虫を食べていたムクドリも、熟した甘い柿の実は大好物...全文
  • ヒヨドリの写真
    ヒヨドリは柿の実をつつきにやってくる小鳥の中では、一番大柄な鳥です...全文
  • 柿の木の写真
    庭先に柿の木がある風景、嵐山町内ではごくふつうに見られるものです。こんなにおいしいごちそうがたわわに実っても、最近はそのまま鳥のエサになってしまうようです。
  • キタテハの写真
    キタテハといえば、柿の実に集まるチョウの代表的存在です...全文
  • ルリタテハの写真
    青い帯びが美しいルリタテハも柿の実が大好物です。夏季には樹液でよくみられ...全文
  • スズメの写真 スズメも雑食性の鳥で、虫を食べたり植物質を食べたりしています。晩秋になって柿の実が熟してやわらかくなると、スズメもこの甘い実を食べにくる常連です。
  • イラガのまゆの写真
    イラガの幼虫は柿の葉によくみられ...まゆは小鳥の卵を小さくしたような...全文
  • カキクダアザミウマの写真
    柿の葉がくるりと巻かれていたら、そのなかにはカキクダアザミウマがひそんで...全文
 
 
  • 梅の木に付くドクガの幼虫の写真ドクガの幼虫は集団で冬を越し、春になると様々な樹木の葉を食べて...全文
  • 梅の木の写真嵐山町にとって梅は"町の木"です。町内ではよく見かけます。早春には...全文
 

イチジクに群がるショウジョウバエ類の写真熟れた果実を鳥やスズメバチがつついた後に、ショウジョウバエ類が群がっています。  柿や梅以外にも、庭に植えられた昔ながらの果樹にはいろいろあります。たとえば桃やスモモ、イチジクなどです。熟して腐りかけた果実には鳥類のほか、多数のショウジョウバエ類やミスジミバエ、ヒロズキンバエなどのハエ類が集まります。またスズメバチ類が訪れていることもあります。ユズやミカンなどのかんきつ類も庭によく植えてある果樹ですが、この果実には小鳥がたまに訪れる程度です。ただし、葉にはアゲハチョウやクロアゲハ等の幼虫がついています。サンショウの木もかんきつ類なので、同様にアゲハチョウ類の幼虫がついているのを見かけます。

 
  • ミスジミバエの写真ミバエの仲間もイチジクの実によく集まります。写真はもっともふつうに見られるミスジミバエ...全文
  • コガタスズメバチの写真コガタスズメバチがイチジクの実をかじっています。スズメバチ類は樹液だけでなく、熟した果実にも...全文
 
イチジクやスモモの実に集まったショウジョウバエの種類と個体数
  種名 イチジク スモモ
1 マダラメマトイ 少ない
2 モンコガネショウジョウバエ 少ない
3 ヒョウモンショウジョウバエ 少ない
4 カスリショウジョウバエ 少ない
5 フタオビショウジョウバエ 少ない
6 オオショウジョウバエ 多い 中位
7 トビクロショウジョウバエ 少ない
8 マガタマショウジョウバエ 少ない
9 クロツヤショウジョウバエ 中位 少ない
10 ススバネショウジョウバエ 中位
11 カオジロショウジョウバエ 少ない 少ない
12 イチジクショウジョウバエ 多い
13 キハダショウジョウバエ 少ない 多い
14 ニセオウトウショウジョウバエ 少ない
15 ムナスジショウジョウバエ 中位
16 キイロショウジョウバエ 少ない
17 オナジショウジョウバエ 多い
18 オウトウショウジョウバエ 少ない 多い
19 コフキヒメショウジョウバエ 少ない

イチジク:菅谷館跡,1998年9月
スモモ:大平山,1999年7月
 なお、個体数については省略し、頻度で表しました。頻度はおおまかに、100頭以上は「多い」、20頭以上100頭未満は「中位」、20頭以下は「少ない」、0頭は「−」で表しています。

イチジクの木の写真
イチジクもよく庭先に植えてあるのを見かけます。熟れた実をおいしく思うのは、なにも私たち人間だけではありません。イチジクの実にはミバエやショウジョウバエといったハエ類、スズメバチやあるいは小鳥たちもよく訪れます。

 
  • ユズの木の写真ユズの木などのかんきつ類には、アゲハチョウの幼虫が必ずといってよいほどついています。庭にアゲハチョウが多い理由は、どうやら花がたくさんあるためだけではないようですね。
  • アゲハチョウの幼虫の写真アゲハチョウ類の幼虫は、若令の頃はまるで鳥のフンのような模様をしていますが...全文
    (写真提供:杉田正之氏)
  • サンショウの木にとまるクロアゲハの写真サンショウの木も同じかんきつ類です...とまっているのはクロアゲハのメス...全文