嵐山町web博物誌・第1巻「嵐山町の動物」
第4章:河川・池沼と田んぼに見られる主な動物たち
第3節 田んぼ、池沼の動物
6.秋の田んぼと赤とんぼ
稲刈りのころになると、田んぼの脇に刺してあるシノ棒の先に赤とんぼがとまっている姿をよく見かけます。たくさんいるところでは、とまる場所の取り合いになることもあるようで、空中でもつれあってけんかする姿を目にします。
トンボの季語は“秋”です。トンボは秋だけではなく、春も夏も見られるのに、季語が秋なのはふしぎですが、これはたぶん、赤とんぼが秋に多いためではないかと思います。
「赤とんぼ」とは種を指す名前ではなく、「アカネ属」というグループに属するトンボの総称です。日本には20種類ほどの赤とんぼがいます。その中でもっともふつうに見られるのがアキアカネ、ナツアカネ、ノシメトンボの3種類です。いずれも田んぼに生息しており、人によって田んぼがつくられる以前の時代には、おそらく河川敷の水たまりや湿地などで暮らしていたのでしょう。秋に産卵が行なわれ、卵で越冬します。翌春は田植えのころにヤゴが生まれ、土用干しが行なわれる前にはトンボとなります。このように、赤とんぼの生活は人の行なう稲作作業にうまくかみ合っており、その結果たくさんの赤とんぼが見られるのです。
俗に「精霊(しょうりょう)トンボ」と呼ばれるウスバキトンボは、旧盆の8月ころにたくさん見られます。田んぼや草はら、空き地など一定空間内を集団で飛びかう習性があります。暑さに強く、炎天下をあまり羽ばたかずに、長時間飛びつづけることができます。
アキアカネは避暑をする赤とんぼとして有名です。初夏に平地の田んぼで羽化した成虫は、すぐに標高1,000メートル以上の高い山を目ざして飛んでゆきます。そして、暑い夏を山のすずしい場所で過ごし、暑さもやわらぐ9月になると集団で山から里へ下りてきて、交尾や産卵を行ない、一生を終えます。
アキアカネの産卵。所々に水のたまった田んぼ、あるいは道路や広場にできた水たまりなど、浅く小さな水面を好んで産卵します。おつながりで産卵する習性があり、前側がオス、後ろ側がメスです。卵は乾燥に強く、水が干上がっても生きています。
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赤とんぼの見分け方
ハネに茶色の帯がある 胸にもようがない | → ミヤマアカネ | |
ハネの先たんに茶色の帯がある |
線が上までとどく | → ノシメトンボ |
線が上にとどかない | → リスアカネ | |
線がつながる | → コノシメトンボ | |
ハネに帯はない 胸にもようがある |
線がとがる | → アキアカネ |
線が平ら | → ナツアカネ | |
りんかくがぼやける(ハネの先たんが茶色のメスもいる) | → マユタテアカネ | |
りんかくがはっきり | → ヒメアカネ | |
黒い線がある | → マイコアカネ | |
●ハネ、胸共にもようがない | → キトンボ・オオキトンボ | |
●後ろばねのつけ根が長くのびる | → ウスバキトンボ (赤とんぼの仲間ではない) |
皆さんはトンボの目の前で指をクルクル回して、トンボを捕まえたことがありますか?
トンボの動きはすばやく、しかも目がたいへん良いため、近づくのさえたいへんです。この方法で捕まるトンボは赤とんぼくらいなもので、指の動きに気をひかせておいて捕まえます。