嵐山町web博物誌・第5巻「嵐山町の中世」
COLUMN
3.コラム:板碑の豆知識 これであなたも板碑博士!
部分名称と梵字の種類
細長い長方形の板碑の表面は、実に様々な内容で埋めつくされています。これらの図や文字の彫りかた、形の特徴などをくわしく分析することで、年号が刻まれていなくても、およその年代を推定することができます。
また、表がわのにぎやかさとはうって変わって、裏には原則として何も描かれていません。
- 板碑の部分名称
- ア山形(やまがた)
先端の三角形の部分です。 - イ二条線
山形の下に二本の線を彫り込み、多層の塔を抽象的に表現しています。 - ウ額部
廂(ひさし)のように少し前に張り出しています。 - エ天蓋(てんがい)
- オ主尊(しゅそん)
主体となる仏の図像です。
- カ脇侍(わきじ)
主尊の両脇に立つ仏を表しています。- キ月輪(げつりん)
- ク蓮座(れんざ)
- ケ花瓶(けびょう)
- コ紀年銘
板碑を作った年月日。または七回忌などの供養をとり行った日付です。月待供養などの場合は23日、17日などの特定の日となります。個人を供養するのは、やはりお彼岸のころが多いようです。まれに故人の命日が記される例があります。- サ干支(かんし)
その年の「えと」です。年号に併記するのが古来の習慣となっていました。- シ偈(げ)
経典の中から、仏教の心髄を述べた部分を選び出し、詩のかたちにまとめたものです。- ス銘文(めいぶん)
板碑を造立した理由、目的と作った人の名前が記されます。- セ基部(きぶ)
板碑を立てるために土中に埋める部分で、中央にほぞ穴をあけて基部をはめ込む「台石」がセットになっていることもあります。 - カ脇侍(わきじ)
板碑に描かれた装飾
板碑に刻まれる仏様(ほとけさま)には様々な装飾がほどこされています。寺院の仏像と比較してみましょう。
- 天蓋(てんがい)
- 仏の頭上にかざされる絹笠(きぬがさ)です。中央に宝珠(ほうじゅ)を戴(いただ)き、左右に天界を象徴する太陽と月が配される例もあります。裾には瓔珞(ようらく)という垂飾りがついています。
- 月輪(げつりん)
- 仏像の光背と同じものです。光明真言と呼ばれる経文を円形に書いたものもみられます。
- 蓮座(れんざ)
- 仏が立つ蓮の花をかたどった台座です。花びらの上で雲のような形をしているのは、蓮の実をデザインしたものです。
- 花瓶(けびょう)
- 三具足のセットを省略して、一対の花瓶だけを描いたものが多くみられます。
- 三具足(みつぐそく)と前机
- 仏前に供える香炉、花瓶、燭台のセットが三具足です。「打(うち)敷(しき)」と呼ばれる布が敷かれた「前机」にのせられています。