嵐山町web博物誌・第4巻「嵐山町の原始・古代」
1.1400年の眠りから
黄泉の国へ
死者の眠る丘、古墳。古事記・日本書紀に綴られる神話を彷彿とさせる世界が広がっています。
古墳の周囲に巡る堀は、この世とあの世の境、いわば「三途(さんず)の川」を意味します。堀の内側は黄泉の国です。遺体を納める石室(玄室〈げんしつ〉)への通路(羨道〈せんどう〉)は、イザナギが死したイザナミを探し、ヨモツシコメに追われた洞くつを、また石室をふさぐ扉は、アマテラスが身を隠した天の岩戸の神話を連想させます。
嵐山町内の小さな古墳も、奈良や大坂の巨大な前方後円墳も、同じ物語がそこにはあります。
- 東松山市若宮八幡古墳石室
- 羨門から羨道、前室を経て、玄室に至るまで横穴が長く続きます。この暗闇を奥に進んでいくと、まるで黄泉の国へ近づいて行くようです。
- 稲荷塚古墳(町指定史跡)
- 復元整備前の状況で、手前側の前室は上半分が崩れていました。石室内部の様子がよくわかります。
- イザナミ・イザナギ(イラスト:森井勝利)
- 横穴式石室の入口である羨道から遺体を安置した玄室を覗くと細長く暗い穴で、まるでこの世から黄泉の国を覗いたようです。
- 復元された埴輪列(群馬県太田市塚廻古墳)
- 埴輪列は、古墳の上に再現された葬送の儀式の様子とも考えられています。塚廻古墳は埋没していた埴輪列がほぼ完全な形で発掘されました。
- 泊瀬少女(イラスト:森井勝利)
- 泊瀬に今は葬られた紀の皇女の死を玉の緒が切れ乱れ散っていると婉曲な表現で嘆きを表わした歌です。古墳を発掘調査すると、勾玉やガラスのビーズがまるでまき散らしたようにバラバラに出土することがあります。1400年の時空を超えた世界に思いを走らせる一瞬です。