嵐山町web博物誌・第4巻「嵐山町の原始・古代」
2.山の恵み
ドングリの森の暮らし
嵐山町のように、海から離れた丘陵地では、山と川の恵みを利用する生活でした。森では獣を狩り、山菜や果実を摘み、イモを掘り、木の実を拾います。住居を建てるために木を伐り出し、焚き木を拾い、ウルシの樹液を集めます。川では魚を捕り、シジミやタニシを採ります。
木の実は、1年分の主食とするのに十分な量が確保できたようです。次の実りを迎えるまでの間保存しておく方法も、縄文人は編み出していました。木の実はあるいは、海沿いに住む人々が作る魚や貝の干物と交換されていたかもしれません。
驚いたことに、森の暮らしではこの頃すでに、一部植物の栽培が始まっていました。各地の遺跡で、アワあるいはエゴマの種子やヒョウタンの果皮が発見されています。これらは、人の手が加わらなければよく実らないのです。
- ワラビの採集(新潟県立歴史博物館展示ジオラマ)
- ワラビは春の山菜として最も一般的ですが、灰汁抜きが必要です。
- 富山県桜町遺跡出土のコゴミ(小矢部市商工観光課提供)
- 桜町遺跡のクルミの水さらし場から、大量のクルミとともにコゴミが出土しました。長さは6cm、時期は中期です。
- 水辺の山菜(ジュンサイ)採り
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春から初夏の水辺にはジュンサイなどの山菜が採れました。 - クリの巨木(長野県佐久町)
- 遺跡からは炭化したクリの実とともにクリの柱材も多数出土しています。青森県三内丸山遺跡では、6本の大型掘立柱建物跡に直径1mに及ぶクリの柱痕が残っていました。縄文時代はクリ林が広がり、巨木もあったようです。
- 秋の収穫・木の実とキノコ(新潟県立歴史博物館展示ジオラマ)
- 縄文人にとって秋は最も忙しい収穫の季節でした。ドングリの森では、クリ、クルミ、トチ、ドングリ類などの豊富な木の実と、キノコの類が採れました。青森県大石平遺跡ではキノコ形土製品が出土しています。
- 石皿と磨石
- 遺跡からは石皿と磨石が組み合って多く出土します。石皿を台にしてドングリの実を磨石で叩き、殻を取り実を潰して粉状にしました。そして、水に晒して灰汁を抜いた澱粉質の粉をパン状に練り、焼いて食べていたようです。
- ヤマノイモ
- ヤマノイモはジネンジョとも呼ばれ、日本に古くからある自生のイモです。前期の京都府松ヶ崎遺跡ではヤマノイモの珠芽であるムカゴが出土しています。クッキーなどの繋ぎとして縄文人も食料としていたようです。
コラム1:縄文クッキー
縄文人たちは、日々どのような食事をしていたのでしょう。興味のあるところです。食材は何か。調理方法は?その手がかりとなるものが、遺跡からごく稀に発見されます。縄文クッキーとか縄文パンと呼ばれています。真っ黒に焼け焦げて炭になってしまったため、腐らずに残ったのです。
近年、その中身が詳しく分析されています。主体となるのは木の実です。クリやクルミ、ドングリをすり潰し、ヤマイモなどをつなぎにしてまとめます。アワなどの雑穀類も混ぜ込みます。ときにはヤマドリや獣の肉などをを混ぜることもあったようです。猟が成功した日のメニューかもしれません。
試しに復元してみると、クッキー15枚ほどで大人1日分の必要カロリーが満たされるそうです。