嵐山町web博物誌・第3巻「嵐山ジオロジア」
2.嵐山町の領家帯と三波川帯
嵐山町の領家帯(りょうけたい)
嵐山町の領家帯と三波川帯の分布
西南日本の地帯構造
粕川が流れている嵐山町の越畑(おっぱた)から太郎丸(たろうまる)にかけた地域に、太郎丸深成変成岩類と呼ばれる岩石集団が分布しています。
これは、花こう岩や片麻岩(へんまがん)によって構成されている岩石集団です。
太郎丸深成変成岩類は、太郎丸の山裾を流れる小川で最初に発見されたものです。
花こう岩は、地下深くでマグマが固まったもの。片麻岩は、地下の高い圧力や温度によって、堆積岩(たいせきがん)などが変成したものです。
これらの岩石は西南日本の領家帯(りょうけたい)の岩石によく似ています。
領家帯の中でも、非持トーナル岩(ひじ - がん)、天竜峡花こう岩、領家型片麻岩、鹿塩型マイロナイト(かしおがた - )に比較されるような岩石が嵐山町でも見つかっています。
西南日本では領家帯の南側に中央構造線をへだてて三波川変成岩(さんばがわへんせいがん)が分布しています。
越畑南西の外秩父山地に三波川変成岩が分布しているため、太郎丸深成変成岩類を領家帯の岩石とみると、これらの間に中央構造線があることになります。
この様に、岩石分布や周辺の地形から判断した結果、奈良梨を通る谷(奈良梨断層)が中央構造線に相当すると考えられています。
- 太郎丸深成変成岩類
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B
写真は、粕川の川底から見つかった非持トーナル岩によく似た岩石です。
粒の粗い石英(せきえい)、長石(ちょうせき)、黒雲母(くろうんも)や角閃石(かくせんせき)が縞状に並んでいます。
風化した岩石 〜太郎丸深成変成岩類の特徴〜
太郎丸深成変成岩類を構成する花こう岩や片麻岩は、粒の大きい石英、長石、黒雲母、そして角閃石を多く含んでいます。
気温の変化により、鉱物は膨張・収縮するのですが、その割合が鉱物ごとに違うため、岩石にひずみができ、壊れやすくなります。
ついにはボロボロに崩れ、砂の様になります。
花こう岩や片麻岩が風化して砂状になったものは、マサ(真砂)と呼ばれます。
嵐山町の三波川帯(さんばがわたい)
嵐山町における領家帯と三波川帯の分布
西南日本の地帯構造
嵐山渓谷の岩畳をつくる岩石に代表されるように、嵐山町の西の外秩父山地には三波川帯の結晶片岩が広く分布しています。
砂岩や泥岩、凝灰岩などがその後の地殻変動を受け、地下の高い圧力や熱の影響で砂質片岩や黒色片岩、緑色片岩などの結晶片岩に変化しました。
西南日本では中央構造線の北側に領家帯、南側に三波川帯の岩石が分布しています。
嵐山町でも北西〜東南方向に伸びる奈良梨断層の北側に領家帯の岩石が、南側に三波川帯の岩石が分布しています。
- 三波川結晶片岩の露頭写真
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嵐山渓谷の三波川結晶片岩です。片理(へんり)の方向が水平に近く、畳を積み重ねたように見えるため岩畳と呼ばれています。
嵐山渓谷の結晶片岩には緑色をした緑泥石片岩(りょくでいせき へんがん)、白っぽい絹雲母片岩(きぬうんも へんがん)、ピンク色をした紅れん石片岩(こう - せき へんがん)などがあります。