嵐山町web博物誌・第7巻【祭りと年中行事編】
盆
流灯に土手の雑草踏みにじり 白井元子
遠くに移り住んだ親戚の人達が、大勢帰ってきました。家の中は久しぶりに賑やかです。
夕方、真新しい浴衣に袖を通します。提灯を手に、皆そろってお墓に向かいます。年に一度、御先祖様をお迎えする晩になりました。
お盆の食事はごちそうです。御先祖様を精いっぱいおもてなしします。一族も、盆棚の前で一緒に食べて、楽しく、ゆったりと過す三日間です。
御先祖様は、すぐに戻らなければなりません。おみやげを茄子馬に乗せ、名残を惜しんでお送りします。また来年まで、私たちを空の上からお守りくださるよう、祈りながら。
1.盆迎え|家の行事
十三日の夕方、夕暮前にお風呂に入り、身を清めてから、以前は晴着を着て、こんばん提灯(ちょうちん)を持って墓までご先祖様を迎えにいきます。かつては松明をたいて家族全員で迎えにいきましたが、最近は簡素化されてきています。
墓の前で提灯に火を入れて「どうぞこの明りで来てください」とか「このあかし(明り)にお乗りになっておいでいただきたい」といって家まで案内します。墓で、一回りして鉦(かね)を鳴らしながら家まで連れてくるという家や、墓地へあげた残りの線香を辻々におき、ご先祖様のために道しるべとする家もあります。
家に着くと、玄関ではなく縁側から上がり、盆棚に火をともし、線香を上げます。その後、ご飯と御馳走の載った御膳を供えます。
静かなお盆でおめでとう
【盆前の風景】
棚参(たなまい)りや新盆見舞いの時に、こうあいさつをします。亡くなった人(成仏しても)に対して「おめでとう」はどうだろうと思うのは現代人の感覚ですが、この「おめでとう」の意味は、正月のおめでとうと同じ意味で、無事に先祖祭りが出来ておめでたい(嬉しい)ということです。このことからも、正月とお盆が対をなした先祖祭りであることがわかります。
盆と正月に期待をかけて働いていたから、無事に盆と正月を迎えられるということは、とても喜ばしいことだったのでしょう。