嵐山町web博物誌・第4巻「嵐山町の原始・古代」
2.復元・嵐山の古墳〈その1〉古里古墳群
埴輪列の復元
平成5年、古里古墳群の中の一基の古墳の発掘調査が行なわれました。尾根10号墳と名付けられた、直径25メートルほどの円形の古墳です。墳丘はすでに失われていましたが、墳丘の裾と溝との間に立てられていた埴輪の破片が多数発見されました。これらを手がかりに、当時据え置かれていた状況を復元することができました。
埴輪は南側に集中していて、正面を意識した配置です。溝のすぐ内側には、筒形の埴輪が弧状に巡ります。墳丘の裏手では、間隔を開けて置かれています。その内側に外側よりも一回り大きな円筒の埴輪と、人物、馬を象った埴輪が並んでいました。どうやら葬送の列を表しているようです。巫女と思しき女性が先頭に立ち、飾り刀を下げた貴人が続きます。その後ろには馬子に引かれた馬が2頭、最後尾にやはり巫女と見られる2人の女性像がありました。ひときわ大きな貴人像は、この古墳に埋葬された人物なのでしょうか。黄泉の国へと旅立つ様を描いているのでしょうか。興味は尽きません。
- 島田髷(しまだまげ)
- 髷の破片が全部で3点出土しているので女性が3人いた事が分かります。
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島田髷の女性埴輪
前後に大きく膨らみをもたせて結い上げ、頭頂で束ねる髪形を表現しています。耳にはイヤリングがみえます。 - 馬鈴と鞍
- 馬形埴輪のお尻の部分に付けられた飾りの馬鈴です。
- 馬形埴輪
- 馬の尾の部分です。飾りにつけられた馬鈴が見えます。
- 馬形埴輪の出土状況
- 埴輪は倒れたりずれたりしないように、下端が埋めて固定されています。馬の体はバラバラになっていましたが、4本の足が当時のままで検出されました。
- 馬子(まご)埴輪
- 左手を上に上げて馬を引く馬子の上半身です。二体分出土しました。
- 馬子埴輪出土状況
- 馬子の上半身は周溝のなかで墳丘の裾から転げ落ちたように出土しました。残念ながら顔の部分は見つかりませんでした。
- 貴人埴輪
- 冠を被り、髪を結って左右に垂れた「みずら」があることから貴人だと思われます。
- 飾り刀
- 柄の部分に飾りがつけられた刀です。おそらく中央の貴人が身につけていたのではないでしょうか。
- 二条凸帯円筒埴輪
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帯が2条の小型の円筒埴輪は30個ほど見つかっており、南側を中心に墳丘のすそに丸く立て並べられていたと思われます。 - 朝顔形円筒埴輪
- 口の部分がラッパ状に大きく開くタイプが1点だけ混じっていました。円筒埴輪の中でも特別な性格のものです。
- 三条凸帯円筒埴輪
- 帯が3条ある大き目の円筒埴輪は内側の列の両側に置かれたと思われます。
- 尾根10号墳・遠景航空写真西から
- 田畑を見下ろせる小高い場所に尾根10号墳は造られていました。