嵐山町web博物誌・第1巻「嵐山町の動物」
第5章:人家周辺の主な動物たち
第6節:子どもの遊びと動物
コラムCOLUMN
標本って何?
人は生きものについて、体のつくりなどを調べる際に「標本」をつくります。標本とは、ある生きものが生きていたときの姿や形がわかるように、また長い期間に渡り保存が効くような状態に加工したものです。これだけではただの死骸ですが、さらに「どこで、いつ、だれが」採ったものかわかるように、それらの内容を明示しておきます。標本でいちばん大切なのは、この採集内容のデータなのです。
では、なぜ標本をつくるのでしょうか。おおまかに考えてみると、以下のようなことが考えられます。
- 生きている状態では観察しにくい、体の細かい部分の形質について、じっくりと観察することができる。
- 常に同じ状態で保存してあれば、いつでもその生きものについて調べることができる。
- だれでも、同じ状態のものを観察することができるため、生きものを理解する上で客観性が生まれる。
- ひとつの「種」について、たくさんの個体を標本にすることで、種内の個体差や、あるいは地域差などの変異を比べることができる。
- ある一定の地域について、たくさんの種類の標本を作ることにより、その地域にすんでいる生きものを調べることができる。
- 標本のデータから、その生きものがどのような場所に生息し、いつごろの時期に見られるのかをある程度知ることができる。
生きものの「種」には、名前をつける際に用いられた、たったひとつの「タイプ標本」が必ずあります。ですから、別の個体について、本当にその種であるかどうかを判断するには、このタイプ標本と比べてみるのが一番確実な方法です。ですから、標本をつくるもっとも基本的な目的は、この「種を特定(同定)する」ことと言えるでしょう。ですが、ひとつしかないタイプ標本を、だれでもすぐに見ることができるとは限りません。また標本の扱いになれていない人は、こわしてしまう危険性もあるので、基本的には見ることができません。そのため、タイプ標本を見なくても種を特定することができるように、標本の特徴を記した「記載文」の内容と比べたり、あるいはより一般的な「図鑑」などを使用して種の同定が行なわれます。
標本とはこのように、私たち人間が他の生きものを理解する上で、必要不可欠なものなのです。