嵐山町web博物誌・第1巻「嵐山町の動物」
第5章:人家周辺の主な動物たち
第5節:家の中の嫌われもの
3.昔ながらの同居人
夕方、ツバメやスズメが活動を止めるころ、家の周りをひらひら飛び回っているコウモリを見た人も多いと思います。これは飛びながらガや甲虫、蚊などの昆虫を捕らえている姿です。これはたいていがアブラコウモリという種で、別名「イエコウモリ」とも呼ばれ、人家や倉庫など人がつくった建物のすき間にしかすまない動物です。 また、大きな倉庫や農家の屋根裏にはクマネズミなどが潜み、夜になると活動します。アオダイショウはこれらのネズミを捕らえて食べる、人にとって有益なヘビです。壁やガラス窓にはりついて虫を食べるヤモリも、今回の調査では鎌形地区から見つかりました。
鎌形地区の古い民家をとりこわした際、町内でははじめての記録となるヤモリが見つかりました...全文
アオダイショウは嵐山町の農家でも、良い動物として大事に扱われているようです。体長は2メートルにもおよび、樹上によくのぼり、鳥の卵や親を捕らえて食べることもあります。
昔ながらのかやぶき屋根も、最近では少なくなりました。
とんだ勘違い?
ハサミムシは黒っぽい色をした種類が多く、地面に近いところに...全文
家の中に入り込み、見た目から他の虫と勘違いされるものもよくいます。例えばハサミムシやコオロギはゴキブリと勘違いされたりしますし、コウカアブやアメリカミズアブといったハエ類はハチに似ており、よく間違えられます。コウカアブは好んでトイレに集まるため「便所蜂」などと呼ばれることも。夏の高温の日にはシマハナアブなどが屋内に入り込み、ミツバチに間違えられることもありますし、チョウの仲間が家に入り込んでガの仲間に勘違いされるのもこれと同じことでしょう。
虫が趣味として飼われはじめたのは、おそらくスズムシなどの鳴く虫や蛍などのきれいなものが最初なのではないでしょうか。きれいなものを身近において楽しみたいという思いは強く、江戸のころにはすでに「虫屋」という虫売りが知られています。最近ではクワガタムシなどを飼う方が多いようですが、スズムシは大人を中心に根強い人気があるようです。
虫屋
スズムシは、昔も今も飼育されている昆虫の代表でしょう。スズムシは、自然状態では草深い茂みの中の地面近くにいます。室内の飼育環境が、野外の生息環境に似ているために、飼育しやすいと考えられます。
COLUMN
ツバメの入り口
「昔はね、ツバメが家の中に巣を作ったんで、ツバメのために入り口を作ってあげたんですよ」と、なつかしそうに語る家主。この「ツバメの入り口」は、今では使われていません。嵐山町内で聞き取り調査を進めてゆく中で、似たような話を何度も耳にしました。また、実際に昔の巣が、そのまま天井のはりに残っているお宅もありました。
ツバメたちは、人の生活が変わると共に、家の中にはいれてもらえなくなってしまったのでしょうか。昔ながらの同居人は、その面かげだけを残していました。