嵐山町web博物誌・第1巻「嵐山町の動物」
第5章:人家周辺の主な動物たち
第2節:神社、学校などの動物たち
2.寺社周辺に多い動物たち
雨の当たらない乾燥した地面に、アリジゴクの巣がたくさん作られています。最近では寺社の軒下もコンクリートでおおわれて、こうした光景はあまり見られません。
アリジゴクの大きなアゴは、巣の中に落ちてくる獲物を...全文
神社などの軒下に、すり鉢のようなかっこうをした巣がならんでいるのを見たことがありますか。これはアリジゴクといって、アリなどの地面を歩きまわる生きものが、あやまって巣の中に落ちてくるのをじっと待っている昆虫です。嵐山町周辺ではアリジゴクのことを「カッコ」や「テコハコ」などと呼び、昔の子供たちはよく、童唄を歌いながらこの巣を掘って遊んでいました。
また神社や寺院など大型の木造建築の周囲では、人家の周辺にみられるハエやアブに加えて、コウヤツリアブなどのハエ類がゆったり飛ぶ姿をみることができます。周囲に雑木林などが多いところではウヅキイエバエモドキが、陽のあたる壁や板戸などに集まります。また、セミの仲間もこうした場所には多く、夕暮れどきに境内で響くヒグラシの鳴き声は特に印象的です。
嵐山町でのアリジゴクの呼び名とわらべ唄
- 呼び名:カッコ、テコハコ、テコカッコ など
- わらべ唄:
- 「かっこ かっこ かっこ 山が火事だから 水汲み出てこい」(平沢)
- 「かっこ かっこ お馬が来るから あとへ しゃれ(下がれ)」(菅谷)
- 「てこはこ でーろ てこはこ でーろ」(鎌形)
- 「かっこかっこ でーろ でないと・・・」(志賀)
- 「かっこ出てこい かっこ出てこい かっこ出てこい」(越畑)
アリジゴクの正体は、じつはウスバカゲロウの幼虫です。成虫は大きなハネでひらひらと飛びまわります。カゲロウと言っても川虫のカゲロウとは全く別の仲間です。
コウヤツリアブがとまっています。日当たりの良い場所では、空中でホバリングしながら神社の建物周辺を飛ぶのが見られます。幼虫はさまざまなハチに寄生することが知られていますが、宿主のハチの大きさによって体の大きさもだいぶ変わるようです。
日が沈む頃、境内に反響するヒグラシの声。金属的で、セミの中でも最もよく通る鳴き声です。遠くから聞こえるヒグラシの声は、私たち日本人にとってはなんともなつかしくひびき、のどかな気持ちにさせてくれます。このセミは、昼間は樹木の根もと付近に止まっています。
ジャコウアゲハの見られる日当たりの良い墓地。食草のウマノスズクサは強い植物で、草刈りをしてもすぐに生えてきます。そのため河川敷きの土手など草刈を頻繁に行う場所にも見られます。
羽化したばかりのジャコウアゲハ。体の脇が赤いのが特徴です...全文
お寺の周りにある墓地など、日当たりの良い開けた場所には、ジャコウアゲハというチョウが良く見られます。ふわふわと飛ぶ姿はとても優雅です。またオスのハネは黒色ですが、メスはベージュ色に黒いすじの入った美しい姿をしています。
また、神社の石垣などすき間の多いところには、ニホントカゲがすんでいます。若いトカゲは尾が青く輝き、とてもきれいです。さらにこのトカゲを好んで食べるシロマダラというヘビも見られますが、夜行性で人目にふれる機会が少ないため、めったにお目にかかれません。
シロマダラは夜行性で物陰にひそむ性質が強く、なかなかお目にかかれないめずらしいヘビです。「ヘビ食いのヘビ」として知られ...全文
幼体の尾が青く美しいニホントカゲ。石垣などすき間の多い場所にくらしており、表に出て日なたぼっこをしている姿をよく見かけます。最近はこうした場所が少なくなってきたため、あまり見かけなくなりました。
神社は山裾にあることが多いためか、石垣が組まれているのを良く見かけます。物陰にひそむヘビなどの動物たちにとっては暮らしやすい場所であり、よく「あそこの石垣はヘビの巣だ」という人がいます。
ですが、実際にはたくさん集まっているだけで、ヘビが巣を作っているわけではありません。