嵐山町web博物誌・第7巻【祭りと年中行事編】
4.小豆粥|家の行事,稲作の行事
十五日の朝には小豆粥を作って食べました。粥は、煮た小豆と繭玉団子、塩を入れて炊きました。これを男性が粥かき棒でかきまわします。使った後は年神様に供えておき、苗代をつくるときの水口まつりに使いました。
粥を食べるときには、はらみ箸を使います。真ん中がふくらんだ形の箸を家族の人数分用意しておきました。粥は吹いて食べると田植えの時期に風が吹いて苗が倒されるといって忌みました。また、粥をとっておいて十八日に食べると蝮に食いつかれないともいいました。
あずき
【小正月の風景】
中国が原産地とされる小豆は、日本では年中行事や人生儀礼などの特別な日の食物に用いられます。嵐山町では、小正月の小豆粥のほか、やぶ入りや盆ガラの小豆飯、彼岸や盆のぼた餅、お宮参りや帯解きに炊く赤飯などたくさんあります。赤い色に特別な意味を持たせていたとも考えられますが、「豆」自体に力があるとされていたのではないかとする説もあります。
あずきのはなし
嵐山町のお隣、江南町(現 熊谷市)には「小豆とぎ婆さん」の話が伝わっています。〜夜、チョイモン屋敷のよこの道を通ると、ヂョキヂョキ、チャカチャカという音が聞こえてくる。これは古井戸の水で婆さんが小豆をとぐ音だと、子供たちは怖がってこの道を通るのを避けた〜というものです。
小豆をとぐ音で人を驚かせる妖怪の話は、アズキトギなどと呼ばれ全国的にあります。岩手県遠野市に伝わるのはこんな話です。
〜旅人が山道でシャキシャキッと小豆をとぐような音がしたので、音のする方へ行ってみたところ、小豆が散らばっている。その中の一粒が逃げるので旅人が追うと、逆に追いかけてくる。旅人は気味悪くなり、空き家に逃げる。音が近づく。のぞいてみると、家の戸を叩くのは目が百もある小豆の化け物だった。そして、旅人は化け物に食べられてしまった。〜