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嵐山町web博物誌・第4巻「嵐山町の原始・古代」

4.コラム:地層の年代を測る

AT(姶良〈あいら〉・丹沢火山灰)の分布(岩宿文化資料館1992より作成)
遺跡分布図
約22000年前、鹿児島湾奥の姶良カルデラを噴出源とする大爆発があり、火山灰の分布は本州一帯に及びました。略称ATと呼ばれ、旧石器時代の地層年代を決める鍵層となっています。
ATに含まれるバブル型ガラス
(飯能市屋渕遺跡、県立埋蔵文化財センター提供)
バブル型ガラス|顕微鏡写真 ATは輝石流紋岩質の火山ガラスに富み、きわめて均質な特徴があります。

 旧石器時代の遺跡・遺物の年代を決める第一歩は、地層の年代を知ることから始まります。考古学とは縁遠く見える地質学の研究を応用しているのです。
 旧石器人が生活していた当時は各地で火山の噴火が続き、火山灰が降り積もっていました。数万年を経て、その厚さは4、5メートルにも達します。火山灰の成分は、年代によっても、また噴火した火山によっても異なっています。激しい大噴火が起きると、同じ質の灰が広範囲に堆積します。これが広域火山灰と呼ばれるものです。噴火の年代が明らかで、成分に顕著な特徴を持つ層が鍵となります。尺度も長さもまちまちの定規を並べて揃えるときの、基準の目印のような役割を果たすわけです。
 火山灰に埋もれた石や石器、木炭などにも手がかりは残されています。僅かに含まれる天然の放射性物質の量から年代を割り出す方法で、また別の分野の研究機関の協力を得ます。
 考古学が対象とする中で、文字の記録があるのは僅か2000年です。それ以前の数万年、数10万年間の年代を知るためには、遺跡と遺物の分析だけでなく、多方面の科学の研究成果を取り入れることが不可欠なのです。