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嵐山町web博物誌・第4巻「嵐山町の原始・古代」

2.旧石器時代の道具

所沢市砂川遺跡出土石器|写真
所沢市砂川遺跡出土石器
(重要文化財、明治大学考古学博物館蔵、笠懸野岩宿文化資料館提供)
ナイフ形石器23点を含む石器群がまとまって出土しました。ナイフ形石器は縦長剥片から作られる定型的な石器で、最も長いナイフ形石器は8.1cmもあります。

旧石器人の石器作り

定型化したナイフ形石器

 旧石器時代の石器は、削器(さくき)・掻器(そうき)・彫器(ちょうき)・尖頭器(せんとうき)・石斧(せきふ)など、おもに形状から多種に分類されています。木の伐採、槍の穂先、皮の剥ぎ取り、ものを切ったり削ったりと様々な用途に用いられました。その中でもナイフ形石器と呼ばれる道具は各地で数多く出土し、旧石器人に最も愛用されていたようです。この石器は、長いものは10センチメートル余り。その名のとおり、ナイフのような美しい形と、鋭い刃を持ちます。
 石器の材料には、黒曜石、チャート、頁岩(けつがん)などが選ばれました。固く、鋭い刃が得られる材質です。1つの石からいくつも石器を作り出しています。

砂川遺跡出土石器接合資料
(重要文化財、明治大学考古学博物館蔵、笠懸野岩宿文化資料館提供)
砂川遺跡出土石器接合資料|写真 ナイフ形石器、石刃、剥片、石核が接合し、10〜15cmのチャートの原石からナイフ形石器が作られる技法が復元されました。その石刃技法は、「砂川型」と呼ばれています。

進化する石器

石器群の移り変り

 約3万年から1万2千年前までの間に使われた石器は、一律ではありません。種類の組み合わせが変ったり、新しい形が登場したりします。3万年前は、局部磨製石斧(刃先を研ぎ出した伐採具)、ナイフ形石器、剥片(はくへん)石器(石を割ったかけらに少し手を加えた道具)などが主流です。2万年前ごろからはナイフ形が増加し、形も定型化してきます。またこの時期は、遺跡数、遺物数ともに最も多くなります。1万3千年前、旧石器時代の終わりころになるとナイフ形は減り、代わって細石刃という特徴的な道具が出現します。
 このような移り変りは、大陸の文化の影響によるものと考えられます。新たな文化を吸収していく日本の旧石器人たちの柔軟な姿勢が、次の縄文文化を生み出す重要な下地となっていたといえるでしょう。

石器の着柄想定図
石器の着柄想定図
ヨーロッパやシベリアの遺跡では、木製や骨角製の柄がついたままの石器が出土し、石器の使用方法を知ることができます。ナイフ形石器や尖頭器は柄の先端にくくりつけ、替刃ができる細石刃は柄の両側に埋め込んでいます。
最古の石器群
(寄居町末野遺跡出土、県立埋蔵文化財センター蔵)
最古の石器群|写真 左下の長さ10.3cm
約30000年前。立川ローム第2黒色帯に相当する黒色帯から、局部磨製石斧、打製石斧、ナイフ形石器、大形剥片などが出土しました。
定型化したナイフ形石器・尖頭器
(鶴ヶ島市横田遺跡出土、県立埋蔵文化財センター提供)
定型化したナイフ形石器・尖頭器|写真左下の長さ3.5cm
約15000年前の地層から100点以上もの石器が発見されたのが横田遺跡です。石材は大半が長野県和田峠産や静岡県箱根産の黒曜石です。ナイフ形石器は最も長期間広域に普及した石器でした。
替刃ができる細石刃
(深谷市白草遺跡出土、県立埋蔵文化財センター提供)
替刃ができる細石刃|写真 左下の長さ2.9cm
約13000年前になると、替刃ができる便利な細石刃が主流になりました。白草遺跡では、細石刃478点、彫器21点を含む4416点もの石器が出土しました。