嵐山町web博物誌・第3巻「嵐山ジオロジア」
第3節:岩石の利用
2.石材の利用
緑泥石片岩と板碑
嵐山町内のお寺や、路傍などでよく見かける板碑には、緑泥石片岩(りょくでいせきへんがん)が多く利用されています。
これは結晶片岩の一種で、小川町下里地区には現在でも石切場があり、そこで産出される緑泥石片岩は下里石(しもざといし)と呼ばれ、関東一円で広く利用されてきました。
嵐山町内でも嵐山渓谷周辺に露頭を見ることができます。
緑泥石片岩は、結晶片岩特有の薄くはがれやすい性質がとくに顕著で、板状にはがれた表面は、光沢があり美しく、柔らかく加工しやすいため、板碑には最適の素材だったようです。
越畑石(おっぱたいし)
荒川層に挟まれる越畑凝灰岩層(おっぱたぎょうかいがんそう)は古くから石材として使われており、地元では越畑石と呼ばれています。嵐山町越畑には近代の石切場跡が残されています。
越畑石は祠(ほこら)の土台石やカマド石、石塀の石材として用いられています。
比較的軟らかいため加工しやすく、火に強いことが石材としての利用価値を生んでいるものと思われます。
小江川石(おえがわいし)
福田層にはさまれる古里凝灰岩層(ふるさとぎょうかいがんそう)は細粒で緻密なガラス質凝灰岩です。
越畑石同様、加工しやすく火に強いため、古墳時代には古墳の石室として、また、江戸時代以降は井戸の側石やカマドなどの石材に用いられています。熊谷市の小江川(おえがわ)で採れたため小江川石という名前がついています。
越畑石には軽石や礫が含まれたりと比較的粒の粗い部分もありますが、小江川石は細粒緻密で均質な岩石です。
嵐山町古里の山中には近代の石切場跡が残されており、この石切場から連続してつながる古里凝灰岩層の露頭を土台石にして老人ホームが建てられています。
第3節:岩石の利用