嵐山町web博物誌・第3巻「嵐山ジオロジア」
第3節:岩石の利用
1.川原の石の利用
およそ35000年前、日本列島に住み始めた私たちの祖先がはじめて手に入れた道具は、川原の礫(れき)を打ち欠いて鋭いエッジを作り出した刃物でした。
その後、金属の刃物が登場するまでの何万年もの間、人々は、硬質で加工しやすい河原の礫を選んで、道具を作り、使い続けたのです。
刃物以外でも、河原の礫は、様々な道具や原材料に利用されてきました。
嵐山町の遺跡から出土した石の道具のいくつかを紹介します。都幾川や槻川の河原にごく普通に見られる種類の礫を、用途に合わせて上手に利用していることがわかります。
石斧・ナイフ
石の斧(オノ)と書きますが、用途は、主に土を掘るスコップや鍬(くわ)などのようなものです。
硬質で扁平に加工しやすい石材(ホルンフェルスや砂岩、石英片岩など)が利用されています。
鋭い刃先をもつナイフには硬いチャート(ガラスと同じ成分)が利用されました。
- 行司免遺跡出土の石斧
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扁平なかたちをした土を掘る道具です。右は、柄を着けた状態を再現しました。 - ナイフや錐(きり)、鏃(やじり)など(山根遺跡出土)
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左上のような硬いチャートの礫を打ち欠いてできた薄い剥片を加工して、様々な石器をつくります。 - 石の錘(行司免遺跡出土)
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紐をかけるために礫の両端を削り込んだ石の錘(おもり)です。右のように魚捕りの網に取り付けたと考えられています。
石皿・磨石・凹石
固い木の実の殻を割ったり、擂(す)り潰して粉にするための道具です。
台となる石皿には大形の結晶片岩、ハンマーや擂粉木(すりこぎ)の役割の磨石(すりいし)や凹石(くぼみいし)には棒状や球形の礫が用いられています。
古墳の石室、井戸、石垣
川原の石は、石器以外にも建築材などとして現在まで盛んに利用されてきました。
古墳の石室に結晶片岩系の扁平な河原の礫を用いるのは、他地域の古墳群にはあまり見られない特色です。
大蔵館跡周辺の遺跡で発見された中世の井戸や石垣には、人の頭ほどの大きさの玉石が利用されていました。
- 稲荷塚古墳と石室の石積み
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扁平な石を横に積み重ねる小口積みという積み方です。大きなものは割石、小さなものは川原の礫です。 - 石組みの井戸(左・行司免遺跡、右・大蔵館跡)
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人の頭ほどもある玉石を小口積みにした井戸です。
鎌倉時代から室町時代のものです。
第3節:岩石の利用