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嵐山町web博物誌・第3巻「嵐山ジオロジア」

第1節:台地の形成

1.山地の隆起と地形

土地の隆起と先行河川

地質年表
地質年表
嵐山渓谷から小川町下里にかかる山地は、第四紀(260万年前以降)に入ってから急激に隆起したと考えられています。

槻川は、小川盆地から嵐山渓谷周辺の山地を通り抜けて流れています。このように隆起している地帯を削って流れる河川を先行河川(せんこうかせん)と呼びます。

この先行河川は、奇妙な光景をつくることがあります。
小川町の下里付近で槻川の流れを観察すると、川が山の方へ流れてゆくように見えるのです。

槻川|写真
画面奥が下流。山に向かって流れるように見える槻川(小川町下里)

河川は土地が隆起すると流路が移動したり、場合によっては川の流れが逆方向になることすらあります。
土地が隆起する量よりも浸食する量が大きい場合は、隆起した分だけ谷が深くなるため、渓谷化が進み、このような先行河川ができあがるのです。

槻川がつくる嵐山渓谷は、山地の隆起と浸食作用によって形成されたものなのです。

河川争奪と比企丘陵の地形

比企丘陵は、秩父山地と埼玉平野の中間に位置しているため、秩父山地ほど激しい隆起をしませんでした。そのため深い谷などができず、全体的になだらかな形をしています。

その中でも隆起が比較的大きかったところは、滑川町の高根山と二ノ宮山であり、その付近はやや高くなっています。

比企丘陵の特徴 〜非常に広い谷幅〜

また、比企丘陵は、小さい河川にしては谷幅(川の両側の水田を含む範囲)が広いことも地形的な特徴の1つで、これも河川争奪(河川の奪い合い)の影響を受けていると推測されます。

粕川|写真
粕川の上流部(嵐山町勝田高倉付近)

源流から2kmほどの地点ですが、谷幅が200mもあります。

粕川は比企丘陵を削って流れていますが、長さが数kmの川にしては、非常に広い谷幅の地形をつくっています。
滑川や市野川でも同様の地形が見られます。

珍しい"平坦な"分水嶺

粕川|写真
高根山付近の平坦な分水嶺(熊谷市小江川)

道の左が滑川水系、右が和田川水系

隣の川との境をなす「高まり」を分水嶺(ぶんすいれい)といい、山の尾根や稜線などが通常、それとなっています。

比企丘陵では、非常に珍しい分水嶺を見ることができます。滑川町の高根山のすぐ北に位置する熊谷市小江川(おえがわ)にある、滑川水系と和田川水系を分ける分水嶺がそれです。
この分水嶺は、上記の写真のとおり、山の稜線などとは似ても似つかない、きわめて平坦な地形になっています。

どうしてこのような地形ができたのでしょう。
高根山付近の隆起のために先行河川ができ、さらに支流を2つの川が河川争奪をしながら浸食が進み、現在に至っていると考えられます。

第1節:台地の形成