嵐山町web博物誌・第2巻「プランタ」
3.初夏〜夏
端午(たんご)の節句
五月五日は男の子の節句です。鯉(こい)のぼりや武将ののぼりを立てて子供のたくましい成長を願います。〔中略〕
また、この日は「菖蒲(しょうぶ)の節句」ともいわれ、菖蒲と蓬(よもぎ)(餅草)を母屋や蔵などの軒先にさして飾り、菖蒲湯を立てて入りました。菖蒲と蓬は子供の腹痛や熱冷ましに効くので保存しておきました。子どもたちは、柏餅を食べたり、新聞紙で兜(かぶと)を作ったりして遊びました。
嵐山町博物誌・写真で綴る嵐山歳事記【祭りと年中行事編】
- ショウブ(菖蒲)
- アヤメ科の花菖蒲とは違うサトイモ科の植物です。全体によい香りがあり、葉を菖蒲湯に使います。健胃剤にも使われました。
- ヨモギ(蓬)
- 葉や茎が灰白色の綿毛でおおわれ、よい香りがします。茎は直立し、高さ1m以上になります。生長した葉の裏には白い毛が残ります。
- カシワ(柏)
-
葉は大きく蒸気で蒸すとやわらかくなり、乾燥しにくいので、柏餅に使います。
枯れ葉が冬になっても枝に残るので、縁起がいいとされます(写真参照)。
七夕の竹飾り
七夕は七月七日に行われることが多く、織姫と彦星が年に一度会える日として知られていますが、盆行事の一つでもあります。七夕に墓掃除をするというのはそのためですし、竹飾りの笹は精霊(しょうりょう)の依り代としての意味があると考えられます。〔中略〕
七夕の前日にシンコ竹を切り、里芋の葉にたまった朝露ですった墨で五色の短冊に願い事や「七夕」「天の川」と書いて飾ります。七夕の前日、家の裏の竹山から竹を切ってくる様子。今年生えたシンコ竹(その年に生えた新しい竹)を使います。
嵐山町博物誌・写真で綴る嵐山歳事記【祭りと年中行事編】
- マダケ(真竹)
-
マダケの筍(たけのこ)は、モウソウチクのそれより遅く、5月下旬頃に出ます。筍の皮はしなやかで、包装によく使われていました。
竹は割裂性が高いので細工物にも用いられます。 - サトイモ(里芋)栽培
-
東アジアの熱帯原産で古くから栽培されています。葉は水を弾くため朝露がたまります。
食用にする子芋部分は塊茎です。
盆
盆準備
ご先祖様を迎えるために、八月十三日の午前中から準備が始まります。
山から盆花(ぼんばな)と呼ばれる萩(はぎ)・女郎花(おみなえし)・桔梗(ききょう)の他、竹・みそはぎなどを採ってきます。
萩や女郎花の枝や麻幹(おがら)でご先祖様が使う箸を新しく作り、茄子で馬を作ります。また、蓮の葉や里芋の葉を敷いた上に水ぶけ茶碗(水のはいった器)を置いて、毎朝水をかけて清めるように、みそはぎを束ねておきます。これらは盆棚に供えるものです。また、盆棚に使うチガヤの縄もないます。盆棚
お盆の間、ご先祖様がいるところが盆棚で、座敷の縁側に隣接したところへ作ります。組み立て式の盆棚が多く使われました。下の段のチガヤの縄には杉の葉をぶら下げます。上の段にはホオズキの他、柿、里芋をぶら下げます。大豆をぶら下げることもあります。
嵐山町博物誌・写真で綴る嵐山歳事記【祭りと年中行事編】
- ヤマハギ(山萩)
-
萩の仲間にはいくつかの種類があり、嵐山町ではこのヤマハギ、マルバハギ、キハギの3種が山野に普通に見られます。花期は7月から9月頃です。
萩はマルバハギ、ミヤギノハギ、ヤマハギなどの総称です。 - オミナエシ(女郎花)
- 群がって咲く様子は少し離れても目立ちます。開けた草原に生育しますが、最近は草原そのものが少なくなり、個体数が減少しています。
- キキョウ(桔梗)
-
栽培されているものはよく見かけますが、野生のものは、ほとんど見られなくなっています。
7月から8月の暑い盛りに、涼しげな紫色の花をつけます。 - ミソハギ
-
湿地に生える多年生の草本。 紫紅色の小花を穂のように多数つける姿は美しい。
ホオズキと同様、半栽培となっている場合があります。 - ハス(蓮) 栽培
- 地下茎はレンコンと呼ばれ、食用にされます。花が美しいため、沼地などで観賞用に栽培しているものも各地で見かけます。
- チガヤ
-
春先に出る花の穂を「ツバナ」と呼び、かむと甘いので昔は子どもたちが食べました。
放棄した水田や畑にはびこりますが、背の高い他の植物との競争には負けてしまい、やがて見られなくなります。 - スギ(杉)
- 現在では花粉症の元凶として芳しくない評価ですが、建築材としてだけではなく、昔は桶材に用いたり、枯れ葉は焚き付けに使ったりと重宝されました。
- ホオズキ
-
丸い実とそれを包む袋も赤いため、火の入った提灯(ちょうちん)を思わせます。
盆棚に使うためか、畑の隅などに半ば栽培のように生えているものをよく見かけました。