嵐山町web博物誌・第3巻「嵐山ジオロジア」
3.変成岩
変成岩(へんせいがん)は、もとの岩石や形成される環境などでさまざまな種類の岩石に区分されます。
地下深部の高温高圧下で、固体のままで、もとの岩石とは違った鉱物が生成されて生まれ変わった岩石を広域変成岩といい、マグマなどの熱によって形成された岩石を接触変成岩といいます。変成岩はこの2つに大別されます。
嵐山渓谷では、接触変成岩は見られません。
変成岩 | 広域変成岩 | 結晶片岩 | 緑泥石片岩 | |
石墨片岩 | ||||
石英片岩 | ||||
緑色岩 | 変玄武岩 | |||
変はんれい岩 | ||||
接触変成岩 | ホルンフェルス | |||
結晶質石灰岩 |
広域変成岩(こういきへんせいがん)
地殻変動により広い地域に帯状に形成された岩石で、この地域では結晶片岩と緑色岩に区分されます。
結晶片岩(けっしょうへんがん)
源岩の違いによって、さまざまな岩石ができていますが、片理と呼ばれる、薄く板状にはがれやすい性質が、共通する特徴です。
強い圧力(偏圧)を受けて、新たに扁平な鉱物が形成され、同じ面上に配列しています。その面が積み重なっているように見える岩石です。
結晶片岩緑泥石片岩(りょくでいせきへんがん)
源岩は火山灰や火山砕屑物で、緑泥石という緑色の鉱物で特徴づけられる結晶片岩です。
鮮やかな緑色は美しく、平らに薄くはがれて加工しやすいことから、石碑(板碑)に利用されてきました。小川町の下里石は有名です。
緑色の繊維状の結晶が緑泥石です。繊維の方向に沿って薄く剥がれやすい性質があります。
石墨片岩(せきぼくへんがん)
源岩は泥質岩で、泥の中の炭質物が再結晶した石墨(炭の結晶)を多く含む結晶片岩です。
石墨片岩のなかで、石墨が斑点状に目立つものを点紋石墨片岩と呼んでいます。
周りの白い部分は長石です。
石英片岩(せきえいへんがん)
石英を主とする白っぽい結晶片岩です。
源岩は砂質岩で、偏圧を受け、砂粒の中の石英が再結晶して白い固い岩石になっています。
石英片岩を顕微鏡でみると、白、灰色、黒色の鉱物粒が集まっています。
これらの大部分は再結晶して作り替えられた石英です。
石英片岩の中でも、紅れん石という鉱物が生成されているものを、紅れん石片岩と呼んでいます。
美しく珍しい鉱物のため、秩父長瀞ではこの岩石を含む露頭が天然記念物に指定されています。
緑色岩(りょくしょくがん)
火山岩、火山砕屑岩、深成岩起源の岩石などを源岩とする広域変成岩です。結晶片岩ほど変成作用が強くなく、片理は見られません。
源岩の性質をのこしている弱変成度の変成岩で、正式な岩石分類名ではありませんが、共通に濃い緑色を示すことから、緑色岩として一括して呼ばれています。
嵐山渓谷のものは、源岩が玄武岩やはんれい岩と考えられています。ともに、上流の小川町の山地から運び出されたと考えられます。
変玄武岩(へんげんぶがん)
緻密で固く重い岩石です。源岩は海底で噴火した玄武岩の溶岩と考えられ、源岩の組織を残しながら、あらたな緑色の鉱物(緑泥石や緑れん石)が形成され、きれいな石の表面をしめしています。
緑色岩変はんれい岩(へん - がん)
源岩は、はんれい岩で、ケイ酸分の少なく鉄分の多いマグマからゆっくり冷却した岩石と考えられています。
緑色の鉱物粒は角せん石や輝石で、白い部分は長石です。鉄分を多く含むため、密度が高くずっしりと重い岩石です。