嵐山町web博物誌・第1巻「嵐山町の動物」
第6章:野生動物の保護
第2節:身近な自然の保護とは
5.自然との共生
もともと自然が豊かであった嵐山町周辺も、時代と共に地域開発が進み、雑木林や田んぼといった昔ながらの風景もだんだん少なくなってきました。身近であった生きものたちも、以前にくらべるといろいろなものが見られなくなりました。
嵐山町では、こうした自然がこれからも身近であるよう、自然を保護するための場所を確保しています。また国や県、町などでは、自然を守るための決まりごとをいろいろと定めたり、保護を推進するための刊行物を出版しています。ここでは参考までに、そうしたものを紹介しておきましょう。
1.嵐山町内の自然保護地
- オオムラサキの森
- 蝶の里公園
- ホタルの里
- 武蔵嵐山渓谷周辺樹林地(緑のトラスト3号地)
- 将軍沢笛吹峠付近の町有地
2.法律・条例・規則
●絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律
1992年に公布されたこの法律は、絶滅のおそれのある野生動植物の「種の保存」をはかることで、良好な自然環境を保ち、将来に渡って人々の豊かな生活を確保することを目的としています。
調査により“絶滅の恐れがある”と判断された種は「希少野生動植物種」として定められ、その保護方法が示されています。
●県希少野生動植物の種の保護に関する条例
埼玉県内に生息する希少な生きものを保護するため、動植物全17種を指定した県条例です。動物では県の魚・ムサシトミヨとイモリ、ソボツチスガリ(ハチの仲間)の3種が指定され、捕獲・採取の制限や保護区の指定など、保護に必要な事項を定めています。
これらの指定種を県知事の許可なく捕獲・採取すると、懲役または罰金が科せられます。また、指定された保護区内の木の伐採、建物の建築など開発をおこなう場合にも、県知事への届け出が必要です。
イモリ
●鳥獣保護法
鳥獣保護と狩猟の決まりを定め、鳥獣類の保護・繁殖や有害鳥獣の駆除により、人の生活環境の改善と農林水産業の振興に役立てることを目的とした法律です。
狩猟鳥獣は哺乳類18種、鳥類29種の計47種類が指定され、決められた猟具により、鳥獣保護区や休猟区以外での狩猟を定めています。
●埼玉県漁業調整規則
在来の水生生物に大きな影響を及ぼす肉食外来魚のオオクチバスとブルーギルについて、規則の第31条により、県内の川や湖、沼などに、県知事の許可なく移植することを禁止したものです。
これに違反した場合は、懲役もしくは罰金、またはその併科により罰せられることがあります。
●武蔵漁業協同組合遊漁規則
嵐山町にある都幾川や槻川などに漁業権が免許され、魚類の放流などで水産資源が増殖されています。しかし、アユなどの禁漁期間や禁止漁具、漁法、採捕禁止区域で水産資源が守られています。漁業権がある水域では遊漁料が徴収され、増殖経費に使われています。
●文化財保護法
●埼玉県文化財保護条例
●嵐山町文化財保護条例
●嵐山町文化財保護条例施行規則
町の区域内に生息する動物(生息地、繁殖地及び渡来地を含む)、自生する植物(自生地を含む)および地質鉱物(特異な自然の現象を生じている土地を含む)で、学術上価値の高いものを「天然記念物」として指定し、その保護・管理を定めたものです。現在、町内に生息する動物類では、特に指定はありません。
●嵐山町環境保全条例
●嵐山町環境保全条例施行規則
町の区域内に生息する動物や自生する植物で希少もしくは貴重な種について、自然環境を確保するため必要と認められるときはそれらを「保護動植物」として指定し、保護区域内においての捕獲、採取等を禁止した決まりごと。現在、町内に生息する動物類では、特に指定はありません。
●嵐山町の緑を豊かにする条例
●嵐山町の緑を豊かにする条例施行規則
保護樹木等の指定と保護、管理に関することを定めたもの。動物類には直接関係はありませんが、自然保護に関係した決まりです。
●嵐山町オオムラサキの森活動センター設置及び管理条例
●嵐山町オオムラサキの森活動センター管理規則
オオムラサキの森活動センターについての定めたものです。
●嵐山町蝶の里公園設置及び管理条例
●嵐山町蝶の里公園設置及び管理条例施行規則
蝶の里公園について、動植物や土石等の採取、捕獲殺傷を禁止した決まりごと。オオムラサキ等の採集禁止は、この条例及び規則に基づきます。
●都市公園法
●嵐山町都市公園条例
●嵐山町都市公園条例施行規則
蝶の里公園の中では、昆虫、植物等の採取を禁止しています。 都市公園に定める場所での鳥獣類および魚類の捕獲、殺傷や植物採取等の禁止を定めたもの。蝶の里公園については別に決まりを設置しており、この決まりごとについては適用されません。
3.保護啓発の主な刊行物(動物類)
●日本の絶滅のおそれのある野生生物−レッドデータブック−
レッドデータブックは、絶滅のおそれのある野生生物の個々の種について、その生息状況等をまとめたものです。希少野生生物への理解を広めることを目的としたもので、特に法的な規制等はともないません。動物類では「脊椎動物編」と「無脊椎動物編」の2編が1991年、当時の環境庁により刊行されましたが、その後時代の変化と共に、2000年には改訂版の「爬虫類・両生類編2000」が刊行され、現在も各分野の見直しが進んでいます。
●さいたまレッドデータブック
−埼玉県希少野生生物調査報告書 動物編−
1996年に埼玉県が刊行した“埼玉県版”のレッドリスト。環境庁編をもとに、埼玉県独自で県内の希少野生動物について取りまとめたものです。2002年には改訂版が出され、嵐山町に生息する動物類では新たに、18種が追加されました。
このほかにも、レッドデータブックをわかりやすく解説した書物が多数出版されています。