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嵐山町web博物誌・第1巻「嵐山町の動物」

第6章:野生動物の保護

第1節:嵐山町の自然保護活動

1.身近な場所にある自然

なんといっても、自然のままのオオムラサキを自分の目でみるのが一番。樹液を吸っている間は、近づいてもなかなか逃げないので、じっくり観察できます。

 豊かな自然を大切にしてきた嵐山町。人々の“自然を大切にしたい”という気持ちは「オオムラサキの森づくり」活動を機会に、より深いものへと育ってゆきました。この章では、嵐山町の活動記録や保護地、豊かな自然が残る場所について紹介します。さらに動物のことを中心に、だれでもできる自然観察や、身近な自然の保護についても考えてみました。

 
  • 観察指導を行う会長の写真
    「自然の会・オオムラサキ」では関根会長がみずから先頭に立って、観察指導を...全文
  • 花植えの写真
    ボランティアで花を植える「自然の会・オオムラサキ」の会員。他にも...全文
  • 越冬幼虫調査の写真
    自然の会が毎年おこなっている越冬幼虫調査。落ち葉の表裏を一枚ずつ...全文
  • 幼虫の保護網をかぶせる写真
    大きく育った幼虫も、寄生蜂に寄生されたり、鳥のエサになったり、時には...全文
 

活動センターの展示の写真
「オオムラサキの森活動センター」ではオオムラサキをはじめ...全文
 嵐山町の「オオムラサキの森づくり」は、地域の自然環境を見直したり触れあうことで、自然の大切さがわかる人々を増やし、豊かな自然環境とうるおいある地域社会をつくっていこうと、1981(昭和56)年にはじまった活動です。3つの目標「1.生態系の重視、2.自然に親しみ学ぶ活動、3.町民の参加」をかかげ、「自然の会・オオムラサキ」を中心に「育てる会」や「嵐山モウモウ緑の少年団」などの団体と町民の方々が協力、参加しています。さらに、活動拠点としてのオオムラサキの森や蝶の里公園など自然保護地も確保され、オオムラサキを中心とした様々な生きものとその生息環境を保全してゆくための活動がさかんです。

オオムラサキの写真嵐山町の自然のシンボル「オオムラサキ」。
(写真提供:杉田正之氏)

嵐山町のオオムラサキ保護活動年表
1980年 嵐山町が埼玉県の「県民休養地構想」候補地に決定
1982年 オオムラサキ生息環境保全調査(越冬幼虫調査等)を実施
1983年 オオムラサキの保全方針を決定(森の整備地区決定、小学校との連携、町・県の役割分担 等)
1984年 菅谷小学校と鎌形小学校に飼育舎が完成
1985年 「オオムラサキの森づくり」基本計画の策定
「オオムラサキの森づくり協議会」を発足し、住民・町・県による推進体制が確立
「育てる会」の活動が始まる
1986年 嵐山町がドキュメンタリー映画「蝶が飛ぶ・森」の製作舞台となる
1987年 「国連環境特別委員会東京会合シンポジウム」で森づくりの事例発表「嵐山町オオムラサキの森活動センター」の建設・整備
1988年 オオムラサキの森植栽工事の実施
活動センター・飼育舎が県から町に譲渡され、共用開始
1989年 オオムラサキの森が環境庁の「ふるさといきものの里」認定を受ける
オオムラサキ自然観察会の開催
志賀小学校と七郷小学校でもオオムラサキの飼育開始
嵐山町蝶の里推進委員会設置
1991年 「オオムラサキのシンポジウム」開催
1993年 「蝶の里公園」の開園 「嵐山モウモウ緑の少年団」設立
1995年 武蔵嵐山渓谷周辺の樹林地が「さいたま緑のトラスト保全第3号地」に選ばれる森づくり協議会が発展的に解散、「自然の会・オオムラサキ」の設立
1997年 武蔵嵐山渓谷周辺樹林地基本計画懇談会の設立
緑のトラスト地に町制30周年記念植樹
1999年 緑のトラスト保全第3号地の公開
「生き物シンポジウム」の開催
自然観察ガイドブック「里山の生きものたち」の編集
2001年 総合学習の導入に伴う越冬幼虫調査の体制見直し
2002年 将軍沢地区産廃跡地の雑木林復元に向け苗木の植樹
越冬調査の写真2

志賀小学校の皆さんがエノキの根元をかこんで幼虫調査をしています。自分の前にある落ち葉を1枚1枚全部見なくてはいけませんので、大変な作業です。さあ、だれが最初に見つけられるかな。

オオムラサキの幼虫の写真
「あっ!オオムラサキの幼虫見つけたぁ」と、みんな大騒ぎです...全文
 嵐山町の小学生は、各学校でオオムラサキの飼育を通して、自然のしくみや大切さを学んでいます。毎年冬になると「育てる会」を中心とした「自然の会・オオムラサキ」の皆さんが指導するなか、エノキの根元にいる越冬幼虫の観察調査をおこないます。このとき一部の幼虫を学校へ持ちかえり、飼育舎の中でチョウ(成虫)になるまで世話をしています。羽化したチョウは自分たちの手で、再びもとの場所へ放されます。また、町内にオオムラサキがどれくらい分布しているかを知るため、毎年継続して、「自然の会・オオムラサキ」を主体に越冬幼虫調査がおこなわれています。

 
  • オオムラサキの飼育舎の写真
    菅谷小学校にあるオオムラサキの飼育舎。細かい金網で幼虫を外敵から...全文
  • ボランティアによる越冬調査の写真
    自然の会・オオムラサキの皆さんが、ボランティアで越冬幼虫調査を...全文

 オオムラサキの保護活動には、大きな問題もあります。それは、一部の心ない人が、保護地内の越冬幼虫を大量に採っていってしまうことです。そうなれば、オオムラサキは激減してしまいます。このためしかたなく、越冬幼虫の引き上げによる保護をおこなっています。しかし冬の間たくさんの幼虫を生かしておくのは容易ではありません。地域の人たちが一生懸命保護しているのですから、身勝手な行為はつつしんでいただきたいものです。

  • 保護の鉄柵の写真
    ...しかたなく保護地内のエノキを鉄柵で...全文
  • 引き上げ保護の写真
    毎年被害にあうエノキでは、幼虫の引き上げによる保護を...全文