嵐山町web博物誌・第3巻「嵐山ジオロジア」
第1節:岩畳をつくる岩石
2.結晶片岩の分布
嵐山渓谷の岩畳をつくる結晶片岩(けっしょうへんがん)は、埼玉県の名勝である長瀞(ながとろ)の岩畳にも見られます。
そして、結晶片岩は長瀞から群馬県の藤岡市へと続き、そこを流れる神流川(かんながわ)とその支流である三波川(さんばがわ)にも見られます。
19世紀に三波川地域で、この結晶片岩が詳しく研究されたことから三波川結晶片岩という名称が使われるようになりました。さらに、この三波川結晶片岩は長野県を経て、紀伊半島と四国を横断し、九州までも細長く分布しています。
- 長瀞の岩畳
-
埼玉県立自然の博物館前に見られる結晶片岩です。
茶色のしま模様をしていることで、虎岩(とらいわ)と呼ばれています。 - 徳島県大歩危(おおぼけ)
-
四国の中央部に見られる結晶片岩です。
大歩危では結晶片岩が渓谷をつくっています。
COLUMN
結晶片岩のでき方
結晶片岩のでき方の考え方の一つを紹介します。
中生代ジュラ紀から白亜紀にかけて、東アジア東縁に沿う海底には大陸から運ばれた砂や泥、陸上の火山からもたらされた火山灰、海底火山の溶岩や火砕岩、そして深い海底には放散虫の遺骸が降り積もったチャートが堆積しました。
中生代白亜紀の終わりから新生代古新第三紀には、大陸縁辺の地下では花こう岩のマグマが発生して地殻を押し上げました。
このため、海底にたまっていた堆積物は低角度の衝上断層によって寸断され、順次海側にのし上がっていったのです。
こうして、地下で押し込められた堆積物は、地下の高い圧力や熱によって変形・変成して三波川結晶片岩が誕生しました。
第1節:岩畳をつくる岩石