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第6巻【近世・近代・現代編】- 第6章:くらし

第4節:今昔話・伝説

郷土の今昔[安藤専一]

八、八坂神社祭り囃子

 八坂神社・愛宕神社は当嵐山町古里六五の一番地兵執神社(元は■取)の末社である。
 比企神社誌によれば、「八坂神社愛宕神社外六社を明治末期(明治四十一年頃)兵執社に合祀す」と記されている。
 八坂神社・愛宕神社は元、尾根愛宕山に鎮座し、尾根及び内出向井組の総氏神として、古くから崇拝され又天王様として親しまれた社である。
 八坂神社は元、天王社と呼ばれ素盞鳴命を、愛宕神社は火産靈命を祭bとし、いずれも数百年来郷土人に崇拝されて来た神徳あらたかな社である。
 八坂神社の例祭は、古くから旧六月十四、十五の両日行なわれ、夏祭りとして御輿の渡御が盛大にとり行われて来た。最近は社殿より元社殿跡愛宕山のお假舎に奉遷して、その当夜、東西大字境まで渡御して祭事を終る程度に変った。御輿の渡御と並行して山車を繰り出すことになったのは大正十四年(1925)頃で、天王祭りをより盛大に行ない、之を近郷に喧伝して氏子衆の気概をあおり、併せて五穀豊穣と疫難払拭を祈願する氏子一同の切実な叫びを具現したに外ならない。即ち氏子若連を結集して祭り囃子の猛稽古にかかり、山車上に華やかな囃子の響き始めた大正末期より今日まで約五十年の歳月を重ねるに至った。
 祭事は現在七月十九、二十日行われているが、養蚕の関係で数日前後する年もある。一時氏子中の総意により祭りを中止したこともあったが、今は再現してやや盛況を取り戻し始めた。
 御輿渡御の掛声や祭囃子の太鼓・笛の音は農民の声である。若連の打つ囃子の音は近隣に響き渡り、氏子中はもとより遠近から参集する人々の心を楽しませてくれる。
 無形文化財祭り囃子を永続されるよう切望して止まない。
 次に祭り囃子の構成等について記す。

一、祭り囃子保存会規約(別紙)により運営する。
二、保存会の構成 八坂社氏子全員を以て構成する。
三、演技責任者 氏子代表及び演技代表
四、演技執行場所 愛宕山及び尾根を主体とする地域とする。
五、演技執行の時期 八坂神社例祭当日、その他
六、使用する楽器 横笛 大太鼓 小太鼓 鐘 その他
七、演技者の構成 笛吹 一人 大太鼓 一人 小太鼓 三人 鐘叩き 一人 ひょっとこ踊り 一人
八、演技者の服装 揃いばんてん 八巻 その他
九、演技の種類
1.若ばやし 2.はやし(こくもでん又はくもうでん) 3.新ばやし
十、祭り囃子の曲譜(別紙)
十一、開始当初の若連と指導者
1.若連 飯島益三 大塚寿良 大塚延一 大塚茂一 大塚悦蔵 関根末吉 飯島貞治 安藤源蔵 田畑正義
2.指導者(江南村板井の人たち) 富岡寿朗 吉野金作 笠原富治 関口義治 関口宗吉 吉野和三


無形文化財古里八坂神社祭り囃子保存会規約

第一条 本会は古里八坂神社祭り囃子保存会と称する
第二条 本会は古里八坂神社氏子中を以て組織し、事務所を尾根公民館内に置く
第三条 本会は無形文化財祭り囃子を永久に保存し、年々の祭事を円滑かつ和やかに行うと共に、八坂神社の御神徳を仰ぎ、氏子の敬神思想を高め、当地区の繁栄を期することを目的とする
第四条 本会は第三条の目的を達成するため左の事業を行なう
   一、祭り囃子技能の練磨
   二、先進地の視察研修
   三、その他
第五条 本会に左の役員を置く
   会長一、副会長二、理事若干名、幹事二、顧問若干名
第六条 役員の選任及び任務は左のとおりとする
一、会長副会長は理事会の推薦による会長は本会を代表し会務を主宰する。副会長は会長を補佐し会長事故あるときはこれを代行する。
二、理事は総会において選任する。理事は理事会を組織し、本会の目的を遂行するために必要な諸般の事項を議決、執行する。
三、幹事は会長之を委嘱し会計事務に当る。
四、顧問は理事会に諮って会長が委嘱し、重要事項について会長の諮問に応ずる。
第七条 役員の任期は二ヶ年とし再選を妨げない
第八条 本会は毎年八坂神社例祭のとき総会を開き会計会務の報告等を行う。役員会は必要に応じ開催する
第九条 本会の経費は八坂神社氏子一同の醵金寄付金補助金等を以て之に当てる
第十条 本会の会計年度は毎年例祭の翌日から翌年例祭の日までとする
第十一条 本規約は総会の議決を経なければ、之を変更することはできない
   附則
第十二条 この規約は昭和四十八年七月二十日より施行する


祭り囃子略譜

一、若ばやし
トンコトンコ トントコトントン トンコトンコ トントコトントン〜
笛に合わせて 繰り返えす

二、はやし(くもうでん)
  テレンテン テレンテン テレンテン
    どん テン どん テン どん
  テンテン テレンコ テンテレン
  テケテン テンテン テンテン テンテン
  テケテン テンテン テンテレン
  テケテン テケテン テレボコ テンテン
  スケテン テレボコ テレボコ テンテン
  スケテン テレボコ テレボコ テンテン
  スケテン テレンコ テンテケ テンテン
  スケテン テレンコ テンテケ テンテン

  笛トヒーヤ
    テレボコ テンテン スケテン テンテン テンテレン
    テレボコ テンテン テレボコテン

  1.テケテン テケテン テレボコ テンテン
  2.同じ
  3.同じ
  4.テケテン テレンコ テンテレン
(1)テンテケ テン テン テン テン テン、テンテン テレンコ テンテレン
(2)同じ   笛 トヒー
 テテンガ テン、 テテンガ テン
 テン どん テン どん テン どん テンドン
 テン テン テレンコ テン テレン

三、新ばやし
  笛 トヒーヤ
    テケテンテン、 テントン テケトン
    テントコ トンテケ
   笛に合わせてこれを繰りかえす

安藤専一『郷土の今昔』 1979年(昭和54)1月
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