ページの先頭

第6巻【近世・近代・現代編】- 第6章:くらし

第4節:今昔話・伝説

嵐山町の伝説(嵐山町教育委員会編)

十五、観音沢

雲に乗った観音様とおがむ人々|挿絵 旧吉田小学校の前に観音沢というところがあります。昔、天から白い雲に乗られた観音様が降りて来られました。この地の人たちがみんな集まり、観音様をおがみました。
 ある日、信者の一人がおまいりに行くと、天から白い雲が降りて来て観音様はその雲へ乗られて、空へあがられて南の方へ進まれました。早速、その後をしたって走りました。「何だ何だ。」と皆が後を追いました。と、ある高い山の上に観音様が降りられました。
 皆がその山へ登り観音様をおがみ「どうして観音様は、こちらへお移りになったのですか。」と聞きました。
 観音様は、「私はできるだけ多くの人を助けたい。救いたい。それには広いところがほしい。吉田で皆の信仰を得たから今度はこの岩殿で私の仕事がしたいのだ。吉田は九十九谷だが、こちらは百五十もの谷があって大勢の人が住んでいる。信心の心が起こったら、『南無観世音菩薩』と呼んでください。すぐとんで行きますよ。」とおっしゃいました。
 皆は観音様へ頭をさげました。暖かい春の陽ざしが、観音様と皆をつつんでいました。

『嵐山町の伝説』嵐山町教育委員会編 (1998年再版, 2000年改訂)
このページの先頭へ ▲