ページの先頭

第6巻【近世・近代・現代編】- 第6章:くらし

第4節:今昔話・伝説

嵐山町の伝説(嵐山町教育委員会編)

六、水切り石

川から引き上げた観音様|挿絵 観音様が本尊様と祭られる千手院、昔は大きな寺で裏の山にもお堂が、あちらこちらにあったそうです。その頃の屋根瓦が山の中から今でも見つけられるそうです。比丘尼堂(びくにどう)といって女のお坊さんのお堂もありました。その比丘尼堂がある時火事になりました。一人の比丘尼はどうした事か、その火事場から逃げ出して山の中を、がらがら走ります。そして槻川の中へ飛び込みました。寒い冬の川です。かわいそうに比丘尼さんは、とうとう死んでしまいました。
 夏になりました。元気な子どもたちが水あびをします。水はとてもきれいで魚の泳ぐのも見えます。もぐったり、川の端の石の穴へ魚を追い込んでつかまえたりして遊んでいました。ところが一人の子が「あそこに光るものがあるよ。」と、みんなに話しました。水くぐりの上手な子が「ようし、おれがとってくる。」とくぐっていきました。みんなが目を輝かせて待っていました。「あったぞ。」と大きな声がしました。みんなが待っているところへ抱え上げたのをみると金ぴかの観音様でした。
 「名主様に見せた方がいいぞ。」「そうだそうだ。」と言いながらみんなで観音様を抱えて名主様の家へ行きました。

水切り石に載せた観音様|挿絵 名主様は、きれいな石を縁台に載せ、その上に観音様を載せました。「これは千手院の観音様だ。水切れが出来たら早速お届けしよう。」と、言いました。
 その台にした石を『水切り石』と名をつけました。観音様のあがったところは『観音淵』と名がつき、『水切り石』は関根茂章さんの家に大切に保存されています。
 千手観音様を祭るこの村は、千手堂と言い、千本の手を持つ観音様が皆さんを守ってくれているのでしょう。

『嵐山町の伝説』嵐山町教育委員会編 (1998年再版, 2000年改訂)
このページの先頭へ ▲