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第6巻【近世・近代・現代編】- 第6章:くらし

第4節:今昔話・伝説

嵐山町の伝説(嵐山町教育委員会編)

四、鎌形の首切り地蔵

名主さんの仕置|挿絵 落合の万右衛門さんの庭の榎の木の話(『三、血の出る榎』)を書きましたが、そのお家のおじいさんの話をいたします。名主さんだったので、村の人々のためいろいろの面倒(めんどう)をみてくれました。
 ある年の夏、雨が降りません。槻川の水を何とか田に入れようと苦心し、都幾川を止めて田へ水を引こうとしても、水が流れて来ません。村の人を集めて雨乞いの祭りをしてもだめです。いよいよ秋になる頃、稲は実らず枯れてしまいました。
 殿様は、おじいさんに年貢のお米を「出せ出せ。」と言い付けましたが、穫れないのですから仕方がありません。殿様は家来に言いつけておじいさんをしばり、仕置場へ連れていきました。殿様が正面に座りおじいさんが引き出されました。家来が刀を抜いておじいさんの首を切ろうとした時、強い風がゴーッと吹いて来て家来を転がしてしまいました。
 殿様も吹き飛ばされました。強い風と一緒に大粒の雨も降って来ました。違う家来が刀を抜いて、おじいさんを切ってしまい、殿様たちは仕置場をようよう抜け出し雨の中を帰って行きました。

助かった名主さん|挿絵 村の人たちは、名主さんが仕置をされたというので、大急ぎで集まりました。雨も止んで仕置場(しおきば)にお日様が照っています。名主さんの姿が見えません。「名主さあーん。」と、大きな声でみんなが呼びました。すると槻川の方から「おーい。」と返事がありました。声のする方へ行ったら、おじいさんは手をしばられて、河原の石に腰かけていました。みんなが飛んで行って名主さんを助けました。
 おじいさんをお家へ送り、みんなが仕置場へ来て落ち着いてその辺を見たら、地蔵さんが首を切られて倒れていました。
 槻川橋(つきがわばし)を渡り、右へ入ると、けやきの木があってその下に首に傷のある地蔵さんが立っています。その左の桑畑が仕置場です。

『嵐山町の伝説』嵐山町教育委員会編 (1998年再版, 2000年改訂)
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