第6巻【近世・近代・現代編】- 第5章:社会
新生活運動
新生活運動について
今度菅谷村が、県の新生活運動事業の指定村となりました。それで新生活運動とはどんなものかということを、村民の皆様がよく理解し、向う三年間の指定期間に、立派な成績を上げて戴きたい思います。
『菅谷村報道』124号 1961年(昭和36)7月20日
この運動は、終戦直後の混乱の中から、なんとかして自分の力で新日本を再建しようと、全国各地に生活刷新のうごきが起りましたが、鳩山内閣のときこれをとりあげ、国民運動として都道府県や市町村にその組織がつくられ、だんだんその活動が活潑になつて、今日に至つております。
新生活運動の目的を簡単に申し上げますと、たのしい家庭、明るい社会、美しい国土、清潔な政治の建設ということになります。
人間の生活には、精神面と物質面とがありますが、それにまつわる古い因習やしきたりがあつて、新しい時代にそぐわないところがたくさんあります。新生活運動はこういう問題について、みんなで考え、これを解決して、私達の幸福を築こうという、自主的な国民運動であります。
従つて各字とか部落とかでまずとりあげる課題や、それとの取組み方は、様々でしようが、それは分けのぼる道のちがいで、目ざす頂上は国民みんなの幸福と明るい国土の建設ということです。
この運動は、他人から指図を受けたり、外部からの命令や押しつけでなく自分たちの考えによつて、自分たちの問題を解決して行くというのが本領であります。もちろん課題によつては、専門的な技術や知識を要するために、他からの指導や助言を受ける場合もあり、栄養改善、保健衛生、農事の改良のように、県や村の行政ともつながることも少くありませんが、主体はあくまでも生活者である国民個人であり、これが集団となつてその工夫や考えから生れる運動なのです。
次にこの運動の進めかたは、池の中に小石を投げ入れたときできる小さな波紋がだんだんと大きくひろがつて行くように、始めは個人から隣組、部落、字、村と次第に拡げられて行くのです。ですから私達は、(一)自分の生活をよく見つめ、反省し、その改善についてよく考え研究しましよう。(二)よいと思つたことはでき易いことから早速実行しましよう。(三)隣組や部落の人々とみんなで話し合いましよう。(四)よいことは、はつきり申合せましよう。(五)申し合せたことは、みんなで協力して実行しましよう。こうしてこの運動は実を結ぶわけで、大体この行き方で活動をはじめ、各地区から持ち寄つた課題を役員会議で話し合い、農休日の設定、時間尊重、冠婚葬祭等旧い慣習の改廢合理化等具体的なその実行につとめてきました。
しかし課題はこれに止るものではなく、消費の節約という消極的な方面のほか生産の増強という積極的な方面もあるはずです。特に現在の農村は曲り角に来ているといわれる時であり、多くの大切な課題があると思われます。
例えば各家庭において収入支出の調査検討、時間利用の工夫による労働・休息・娯楽のやりかた等をはじめ、生産の工夫にも多くの課題がありましよう。更に精神の面からも、目まぐるしい世の進歩に遅れないために学習の工夫をすると共に、お互に協同して幸福を築こうとする友愛の精神の作興が大切であり、この精神の如何がこの運動の成果を左右することにもなります。
今回県の指定の方針として菅谷村全地域を指定するがまずそのうちの小地域をこの運動推進のモデル地区とし、これを拠点として指定期間三年間に、他の地域に波及発展して行くようにしたいとのことで、先般村協議会で、遠山・太郎丸両地区を推薦することになりました。
両地区の方々は勿論、他の地域の方々も、自分の問題として真剣にこの運動にとりくみ、協力推進して立派な成果をあげられるよう希望します。
(教育長 金子慶助)