第6巻【近世・近代・現代編】- 第2章:政治・行政
嵐山町
比企広域圏協が提唱 ハイタウン21構想
21世紀の比企は森林文化都市
歴史的遺産を活用 ハイテク産業とも調和広域的な都市づくりに取り組む比企広域市町村圏協議会(会長・芝崎亨東松山市長)はこのほど、二十一世紀を展望した比企圏の都市整備の指針となる「ハイタウン・比企21構想」をまとめた。それによると、同地域の歴史・文化の伝統的特性を生かし、首都圏に残された貴重な森林資源を土台とした「森林文化都市」の創出を目指している。また、同構想の中核となる森と緑を保全するため、森林文化財団(仮称)の設立を提唱するなど、例えば田園都市論といったこれまでの都市類型とは違った新しいタイプのユニークな都市論を展開している。
構想によると、比企地域の林野面積は一万四千六百七十三ヘクタールで全県の一一・四%を占め、東京から四十−七十キロ圏にあり、首都圏有数の森林地帯を残している。また、仏教文化の源流である慈光寺(都幾川村)をはじめ多くの歴史・文化を伝統的な遺産としてもつ。こうした貴重な財産を都市整備の骨格として位置付け、比企全体の街づくりを計画。
『埼玉新聞』1986年(昭和61)8月19日
森林と文化の貴重な財産を中核として、先端技術産業などの導入を図り、産業と自然環境が調和するうるおいと快適さにあふれた「森林文化都市」づくりを構想のテーマに据え、これまでになかった新タイプの都市論を打ち出している。
また、核となる森と緑を保全するための方策として①森林所有者と住民、企業との間に「緑の協定」を結ぶ②分収育林制度③第三セクター「森林文化財団」の設立−など実現化戦略を提言している。
伝統文化の側面からは、県が昨年(1985)3月に策定した「新長期構想」の主要施策の一つ「比企歴史のむらの整備」も、構想に組み込んだ。具体的には四つの歴史・文化ゾーン▽吉見百穴(吉見町)▽菅谷館跡と歴史資料館(嵐山町)▽和紙の里・和紙センター(小川町)▽慈光寺(都幾川村)−を散歩道や緑道で結び、自然散歩を楽しみながら、歴史文化に触れ合う。
さらに、森林文化都市の具体的な実現目標として①緑につつまれたハイテクのまち②個性的人材の育成③自然と調和した健康と文化のまち④人口四十万の自立型都市−を挙げ、首都に近い地の利から民間研究機関、先端産業、大学などの積極的な誘致が必要としている。
「ハイタウン・比企21構想」は昨年、比企広域市町村圏協議会が構想調査を財団法人埼玉総合研究機構に委託し、その結果を研究委員会(座長・牛見章東洋大教授)と同協議会で検討を加えまとめた。同協議会は東松山市、小川町、滑川町、川島町、吉見町、鳩山町、嵐山町、都幾川村、玉川村、東秩父村(秩父郡)の一市六町三村で構成している。
この構想がまとまったことで、比企地方の指針ができたことになり、今後、各市町村の振興計画やテクノグリーン構想などと、どのように整合性を図っていくのかが大きな課題となる。