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第6巻【近世・近代・現代編】- 第1章:地誌

第7節:七郷村郷土研究(抄)

第二編 郷土研究

第四章 郷土の博物界

第二節 植物の観察

觀察要項

1 食用植物 これは最も児童生徒状態に接近して居るもので農家は次の様に區別して居ります。
 イ 穀物類…稲・大小麦・裸麦・栗・稗・玉蜀黍・大小豆・豌豆・蕎麦等。
 ロ 蔬菜類…甘藷・馬鈴薯・蘿蔔・人参・蒟蒻・菘菜・南瓜・西瓜・胡瓜・落花生等。
 ハ 果樹類…蜜柑・橙・林檎・梨・桃・柿・栗等。

2 工藝製造用植物
 イ 繊維料 楮・三・綿・麻・絲瓜等。
 ロ 採油料 胡麻・油菜等。
 ハ 採糖料 甘蔗・糖菜等は我郷土にはなし。
 ニ 採染塗料…藍・山藍・漆等。
 ホ 薬用及香料…薄荷・茶・胡麻・罌子(罌粟、けし)等で人参・煙草などはない。
 ヘ 釀造原料…大麦・米で馬鈴薯・玉蜀黍・甘蔗等からはわが郷土産ではとつてゐぬ。

3 1及2は直接関係ある上から分けて觀察せしむる要項としたのであるが又次のやうに分類するか必要だらうと思ふ。
 イ 食べらる植物…葉を食うもの・根を食うもの・茎を食うもの・花を食うもの・芽を食うもの。
 ロ 食べられぬ植物…毒あるもの・毒ないもの。

4 またかういふふうに分けてもよからう、そして觀察せしむることもよからう。
 イ 森林植物
 ロ 観用植物

5 色と時期とによって分けて觀察せしむることも必要である。

郷土の植物

 観察要項5によって之れを分けて見やう。

色:白

 (晩冬より初春に亘るものも合す)
梅、桃、杏、梨、林檎、ボケ、白ヤマブキ、イチゴ、ユキノシタ、シヒノキ、オホナラ、コナラ、ナヅナ、ダイコン、カブラ、ハクモクレン、白花ツツジ、葡萄、ヤマブダウ、白レンゲサウ、シュンラン、ヲサラン、白ツバキ、タマツバキ、ハンノキ、イテフ、ヂンチャウゲ、ハコネウツギ、ヲドリコサウ、ユキワリサウ、マルバスミレ、エンレイサウ、ウコギ、ヒヤシンヤ、チュウリップ、花サフラン、アネモネ等
 (晩春より初夏に亘るものも合す)
カノコ百合、野百合、オニユリ、ギバウシ、サギサウ、ハウチヤクサウ、シラフヂ、ツメクサ、クズ、イハフジ、アフヒ、ムクゲ、ヤマバウシ、キリ、アサ、ギンセンクワ、バラ、カナメガシ、コゴメウツギ、フウラン、セキコク、ダイダイ、柚、テッセン、牡丹、芍薬、ウツギ、シキシ、クチナシ、ツクバネサウ、菊、ケシ、ヒナゲシ、アサガホ、ヒルガホ、クサギ、オモダカ、蓮、ザクロ、キャウチクトウ、柿、カウヅ、ナツメ、クヌギ、ヌルデ、ホタルブクロ、セリ、ドクダミ、ヒシ、ヘウタン、菖蒲、キンギョサウ、ジキタリス、除虫菊、カンナ等
 (晩夏より初秋に亘るものも合す)
蕎麦、カハタデ、イヌタデ、菊、エゾギク、カハラヨモギ、モクセイ、モウリンクワ、ヒラギ、ホシクサ、オホホシクサ、ケイトウ、センニチサウ、フヤウ、萩、ホウセンクワ、ナデシコ、トラノヲ、ミソハギ、リントウ、ハマユリ、アシ、メウガ、キヤウ、カルカヤ、白花オミナヘシ、コスモス等
 (晩秋より初冬に亘るものも合す)
椿、サザンクワ、チヤ、バラ、ビハ、梅、ヤツデ、菊、ヒラギ、水仙
冬は甚だ少ない。然し培養の結果化成した寒菊、寒牡丹、冬梅、冬至梅などがある。

色:黄

 (晩冬より初春に亘るものも合す)
タンポポ、キンセンクワ、ワフバイ、テウチグルシ、福壽草、ヤマブキ、メシャクナゲ、ミツマタ、ニハトコ、ナタネナ、サンシュ、キンポウゲ、キツネノボタン
 (晩春より初夏に亘るものも合す)
キウリ、シロウリ、アヲウリ、マクワウリ、スイクワ、トウグワ、菊、ヒマハリハルシャ菊、カハホネ、ジュンサイ、ビヤウヤナギ、バラ、キンシバイ、カタバシ、ワスレグサ、ワサビ、ミヤコグサ、トチノキ等
 (晩夏より初秋に亘るものも合す)
菊、クジャクサウ、芭蕉、ダンドク、モクセイ、トロロアフヒ、オミナヘシ、ケイトウ、キハギ、イモ、レイシ、オトギリサウ、センブリ等
 冬(晩秋より初冬に亘るものも合す)
菊、バイ、ロウバイ

色:赬(テイ、あか)黄

 (晩冬より初春に亘るものも合す)
ツツジ、ヤマイモ、エビネ
 (晩春より初夏に亘るものも合す)
燈心草、タマイ、カヤツリグサ、ノウゼンカヅラ、ヒアフギ
 (晩夏より初秋に亘るものも合す)
ハシバミ、イチヰ、牽牛
 (晩秋より初冬に亘るものも合す)
冬期間の山野は皆赬黄色を帯ぶ。

色:紅及赤

 (晩冬より初春に亘るものも合す)
梅、桃、ヒガンザクラ、マルメロ、海棠、ボケ、ツツジ、キリシマ、シャクナゲ、ツバキ、サザンクワ、タマツバキ、ハコネウツギ、クリンサウ、ユキワリサウ、レンゲサウ、エビネ、アネモネ、ヒヤシンス、チウリップ等
 (晩春より初夏に亘るものも合す)
薔薇、シモツケサウ、アフヒ、ワタボンデンクワ、牡丹、芍薬、ケシ、ヒナゲシ、サルスベリ、ザクロ、ネムノ木、アカツメクサ、タウギリ、ビジョザクラ、ベニバナ、アザミ、ヒメユリ、ワスレグサ、セキコク、モシヅリ、キャウチクトウ、松葉牡丹、サツキ、蓮、サンダンクワ、テウセンアサガホ、ハウレンサウ等
 (晩夏より初秋に亘るものも合す)
ミヅヒキグサ、ア井、ワレムカウ、タデ、ナデシコ、センノウ、菊、エゾ菊、クジャクサウ、ミソハギ、牽牛、ルカウサウ、鶏冠、センニチサウ、コマツナギ、フヤウ、秋海棠、ホウサンクワ、キンギョ草等
 (晩秋より初冬に亘るものも合す)
ツバキ、サザンクワ、バラ、ミヤマ■■、牡丹等

色:赤及紫

 (晩冬より初春に亘るものも合す)
スミレ、コスモス、ミヤマスミレ、ムラサキシキブ、ヤマムラサキ、コムラサキ、スワフ、イハフヂ、モクレン、ツツジ、アケビ、チヤフジザクラ、ユキワリソウ、ツユクサ、カタクリ等
 (晩春より初夏に亘るものも合す)
藤、豌豆、ヰンゲンマメ、ヤエナリ、小豆、ナタマメ、ハナシャウブ、アヤメ、ジャガ、アフヒ、ムクゲ、ハナシキミ、美女桜、ナスビ、センダン、キリ、ブシュカン、ホウノキ、アサガホ、ホタルブクロ、アヂサヰ、ツリガネサウ、ウツボグサ、ニハセキシャク、コナギ、ミヅブキ、キャウラン、菖蒲等
 (晩夏より初秋に亘るものも合す)
エゾギク、フヂバカマ、シヲン、ヒメシオン、カツラヨモギ、オホノギク、オキナグサ、トリカブト、チドリサウ、ハギ、マルバハギ、キキャウ、サハギキャウ、牽牛、ワレモカウ、メハジキ、リンダウ、ダンギク、コンナヤクイモ等
 (晩秋より初冬に亘るものも合す)
イウテコクワ

 次に七郷村に於ける樹木の大なるものを先にあぐべし
木の種類、高さ、太さ、備考
柳 一丈八〇〇〇分 〇丈二七〇分 七郷尋常高等小學校校庭
松 六・〇〇〇 〇・三八〇 七郷學校坂下
松(相生松) 一〇・〇〇〇 一・〇〇〇 大字古里尾根の山
松 三・四〇〇 〇・六六〇 大字越畑金泉寺山
松 四・七〇〇 〇・七五〇 仝下怩フ山
松 一〇・〇〇〇 一・三〇〇 大字杉山八宮神社境内
松(雄松) 九・五〇〇 一・一〇〇 大字勝田上郷
杉 一一・〇〇〇 一・六五〇 大字吉田手白神社境内
杉 五・九〇〇 〇・七四九 大字越畑鎮守の森
杉 九・五〇〇 一・三〇〇 越畑薬師堂境内
欅(けやき) 一〇・五〇〇 一・七三五 大字勝田十五番地
欅 八・〇〇〇 一・三〇〇 大字古里尾根
欅 六・七〇〇 〇・七〇〇 大字吉田
欅 三・五〇〇 〇・五三〇 大字古里
欅 七・二〇〇 〇・七五〇 仝
欅 九・〇〇〇 一・一五〇 大字吉田上郷
樅(もみ) 一〇・〇〇〇  一・四〇〇 大字杉山八宮神社境内
樅 八・〇〇〇 一・二六〇 大字杉山谷山(やつやま)
桑 一・五〇〇 〇・二五〇 大字太郎丸
樫(かし) 五・九〇〇 〇・九二〇 大字古里内出
樫 五・五〇〇 〇・五三〇 大字勝田高倉
大楢(おおなら) 四・五〇〇 〇・四三〇 大字吉田中郷寺前山
楓(かえで) 七・五〇〇 〇・五〇〇 大字古里尾根
榎(えのき) 九・九〇〇 一・六五〇 大字吉田堂前
榎 七・〇〇〇 〇・九八六 大字杉山
榎 五・〇〇〇 〇・七四〇 大字吉田上郷
榎 一〇・九〇〇 一・一〇〇 大字吉田下
梻(しきみ) 一・九〇〇 〇・三五七 大字杉山城山城跡
榧(かや) 八・〇〇〇 一・二〇〇 大字古里重輪寺
柊(ひいらぎ) 三・〇〇〇 〇・五六〇 大字古里尾根
樟(くすのき)  大字杉山八宮神社前

 右は明治四十四年(1911)九月編者及び當時の高等科の児童の調査にかかるものなれども不正確たるは免かれない。殊に高さに於ては猶更である。其の後伐採されしものもあるだらうし、また多少生長しまたは太った事とは思ふてゐるが、南洋の大樹木などと比較せしむる時には、少なからぬ参考ともなるだらうし、山の高さなどを授くる時も高さを直觀せしむる上に頗る有益と思ふ。

七郷尋常高等小学校(板倉禎吉編)『郷土研究』(嵐山町立七郷小学校蔵)
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