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第6巻【近世・近代・現代編】- 第1章:地誌

第7節:七郷村郷土研究(抄)

第二編 郷土研究

第四章 郷土の博物界

第一節 動物の観察

観察要項

 由来、郷土に於ての博物科の観察は一つ一つ宛、而も学術上の順序に於てなすべきものでない。沢山のものが一度に共存して互に相関係し。そこでは生存競争も共同生活も行なはれるのである。そこでそれ等のものと比較対照して性質、性格、任務等を認識して、自然界の協同も分業も悟らねばならぬ。故に動物にした所が何々、何々と別な動物を一つ一つ教室にもち出して断片的に談話するのではない。

1 吾等の生活に関係する種々の動物中吾等の敵対となり、常に反抗して危害を加へつゝあるもの。
2 吾等の生活に益を与え人生の伴侶となってゐるもの。
3 1及び2を一括して他の植物などゝ比較して動物の観念を得さす。
4 形の上から動物を児童に分類さす。鳥、…、獣、蟲、魚。
5 鳥と獣との区別はどこにあるか 羽の有無(■■)、卵を生むと否、子に乳を与へると否、毛と羽毛等により。
6 鳥と魚 水に居ると空を飛ぶと、羽のあると、鰭(ひれ)のあると(水中にも鳥あり、魚にも飛ぶものがある)
7 獣と魚 卵と子育、冷血と温血、(鯨の如きものもある)
8 蟲と魚
9 土着の鳥と渡り鳥
10 動物と自然美 鳥や獣や其他の動物が居るために如何に我等が心目を楽しませるか。相当に愛してやらねばならぬ。

郷土の動物

 獣類 森林は今や年と共に其の下枝を払ひ落葉を掻き集むるなどして其の間に獣類の棲息を断つやうになったが、最も多いのが兎(うさぎ)で狐(きつね)、貂(てん)、狸(たぬき)、鼬(いたち)、狐獺(水獺、かわうそ)等である。そして猿(さる)、猪(いのしいし)、鹿(しか)、青鹿(あおしし、カモシカ)等は之れを見ることは出来ぬ。

 鳥類 あまり多からず雀(すずめ)、鶉(うずら)、鴨(かも)、山鳥(やまどり)、鳩(はと)、雉子(きじ)、懸巣(かけす)、百舌(もず)、鶫(ツグミ)、頬白(ほおじろ)、鳧(鵆、ちどり)等其の他の小鳥にすぎぬ。

 家畜、家禽 には牛(三頭)馬(一九三頭)豚(一〇)家兎(いえうさぎ)(一八頭)鶏(二一一二羽)犬(二〇頭)猫(二〇〇頭)等である。(括弧内の数字は明治四十三年七郷村現在)

 魚族 鯉(こい)、鮒(ふな)、鱒(ます)、鱣(おいかわ、はや、くき、うぐい)、鯰(なまず)等である。

 爬蟲類(はちゅうるい) ヤマカガシ、アヲダイシャウ、ツチムグリ、蜥蜴(とかげ)の類は最も多い。毒蛇はマムシの多く生息するだけである。

 其の他の動物 節足類、両棲類、軟体動物等から腔腸(原始)動物に至るまで温帯に棲息する普通のものは大抵居る。

七郷尋常高等小学校(板倉禎吉編)『郷土研究』(嵐山町立七郷小学校蔵)
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