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第6巻【近世・近代・現代編】- 第1章:地誌

第7節:七郷村郷土研究(抄)

第二編 郷土研究

第一章 郷土の陸界

第四節 湖沼の觀察

觀察要項

1 停滞した水面のことで小さなものは池と云ひ、大きなものは沼と云ひ湖といふこと。
2 川の流れ込むのと、川を流出せしむるのと、溜り切りて有るとの別をも注意さすること。
3 水を濾過して澄ませる作用をなす湖と、水を溜めて居る作用をなす湖と、中に入って居る物を沈殿させる作用をなすものと、水の分量を調節する作用などと種々あること。
4 湖沼に川の流れ込む時は土砂を沈殿さして浅くする。之れがために将来湖沼がどうなるか。地理上の盆地と名付ける山間の平地などの成因を類推さすることができる。
5 湖と交通及び水力 多きい湖は交通に便利を與ふることが多大である。また湖が調水器の働をなすことから琵琶湖の疏水工事、猪苗代湖の疎水工事等、其の他大規模の水力発電所などもあるが、わが郷土にはそれがない。
6 湖の成因 火山の噴火口に雨水の溜ったものがあり、又火山が噴出して溶岩火山灰などが流れを止めてしまったものもある。海の出口か何かであったもの、陥落して出来たもの、山崩のために出来たもの、河道の屈曲が其の度を過した結果、新河道が出来たため、舊河道が三ヶ月形に残ったもの、風のために出来た砂丘が海岸の川の口を堰きとめて出来たもの等種々あるが、わが郷土の多くは人工的。谷合をとめて其水を水田に引くためにつくられたのが主だ。荒川に至ると三ヶ月湖を見る事も出来る。
7 湖の養魚 湖ではなく沼をのみ有する吾郷土は、其の沼から大なる漁業上の収入を與ふるやうはものはないが、鯉、其の他鰻などの養魚は多少行なはれて居る。
8 湖沼の風景 風景はよいが避暑遊覧の客の来るものは少ない、殆どない。従って舟遊びをなして楽しむといふやうなものも吾が郷土にはないのである。

郷土の沼

 吾が郷土には灌概の便を圖るために人工的に作られた少さな沼が多数にある丈で湖はない。従ってこの少さな沼によって大きい湖を類推させねばならぬ。而し少なる溝より流れ込む水にてもよく沈澱作用をなして居ることがわかる。

 七郷村の沼は次のやうである。
 字別  数   町 反 畝 歩別
 古里  一一  二、八 七 二二
 吉田  二〇  七、〇 二 一九
 越畑  二一  五、六 六 一三
 勝田  一〇  二、一 五 〇一
 杉山   八   、九 七 〇八
 廣野  一二  二、〇 一 二七
 太郎丸  八  一、六 八 二二
  計  九〇 二二、三 九 二三

 大きいもので直觀せしむるに都合のよいものを次に記さう。
 新沼 大字吉田 反別 一町三反四畝五歩 周圍八町余
 川後岩沼 大字越畑 反別 一町七畝二十二歩 周圍五町五十六間
 三反田沼 大字吉田 反別 一町五畝八歩
 五反田沼 大字吉田 反別 九反七畝二十一歩 周圍九町四十間
 十三間沼 大字越畑 反別 九反二畝十三歩
 長沼 大字勝田 反別 八反四畝十七歩 周圍五町十三間
 柏木沼 大字古里 反別 八反三畝二十四歩攸

七郷尋常高等小学校(板倉禎吉編)『郷土研究』(嵐山町立七郷小学校蔵)
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