第6巻【近世・近代・現代編】- 第9章:戦争
前線慰問誌『比企』第1号 (1944)
郡下学生傑作集
俳句[菅谷国民学校6年生]
菅谷国民学校初等科六年男子
庭先にこうろぎ鳴いて夜露おり K
前線慰問誌『比企』第1号「郡下学生傑作集」 1944年(昭和19)5月
涼み台北極星を見つけけり
稲を刈る頭上にとんぼ限りなし
奥山の紅葉にかゝる時雨かな N
大霜に音なく落ちる木の葉かな
霜晴れや木から木へとぶ小鳥たち Y
日あたりで拾ふ落葉や冬の山
年暮やマキンタラウに花と散り N
元日や初日に浮ぶ大八州 Y
冬の夜や兄弟二人で縄なひり N
田圃路一人で通る寒さかな T
十二月 皇太子様 御誕辰 O
残月に露ある草を刈りにけり G
大らかに初日は出でぬ大八州
明月や蟲鳴く声にひきづられ S
冬の日や遠く見えるは雪の山 K
ゐろりばた泣き泣きあたる子供かな T
南天の実をつゝきゐる雀かな U
冬山の炭焼き煙昇り立つ
放課後やしんとしづまる校舎かな O
冬小春汽車の笛聞く山の上
道ばたにぱさぱさ落ちる木の葉かな T
霜晴れやくつきり見える赤城山 N
放課後に撃ちてし止まむの寒稽古
秋風にさそはれさうに使かな N
初霜の寒さ知らるゝ長大根
雪の日や窓に飛び入る雀かな F
月冴えて手桶の水にうつりけり N
道端に青々と見る麦のさく
戸の穴にぼろをつゝこむ寒さかな S
よその田も追つてやりたい村すずめ
あの山この山みんな淋しい冬木立 T
わらにゆのもみをつゝつく雀かな
北風に負けるな雀飛び廻れ O
正月やイロハがるたの面白さ M
寒稽古戦地を思へばなんのその
そよ風にゆられてこぼるすゝきのみ Y