第6巻【近世・近代・現代編】- 第9章:戦争
比企郡七郷村青年団『青年団報』第2号 (1939)
郷土の便り(太郎丸)
大沢卯之吉
日支事変以来字としても皇軍戦勝の祈願を初め、其の他色々祈願など鎮守様にて毎月三日正十二時には太鼓合図の元に行なはれます。我が皇軍も益々敵の心臓たる地に又奥地に攻め進み行く様ですが、我が皇軍の進むのもけして支那が弱いのでは無く、言ふ迄も無く我が皇軍の強い事と深く深く認識致す上、我等国民と致して、又青年と致して、飽迄(あくまで)国民精神総動員の事をば守り、私くし達農務に出来うる限りの力と熱とを持て邁進して行く覚悟で御座居ます。
比企郡七郷村青年団『青年団報』第2号 1939年(昭和14)12月
其の意気を持て今は農務に励んで居ります。何んと言ふても農家としては物を取る事が大切であると思います。此の事変と致しても、大切な小麦の如きは当字と致しては例年度より、はるかに増産で有ります。一戸当り二、三俵は確実に目に見えて居る様な訳です。又春蚕の如きは実に、莫大の結果に上って居ります。やる事なす事皆な熱心にする上か、此の様に小麦や麦なども言ふ所ろ無く、万点万点にと進み行き、字に致しては誰でも又何処の家でも益々恵比寿様の如くになって今の仕事の晩秋蚕に励んで居るが、前い、前い【前へ、前へカ】からの意気である上、色々の結果の様子です。
又桑園の如きは金肥も節約致した上、自給肥料にて矢張り例年の約三倍以上増産致して居ります上、字と致しては申迄も無く、他村や他の字にも随分桑を売り出して居ります。
蚕で上がり、又多少桑で上る上、益々にこにことに笑ふ角には福来るの様な事で、又農家と致して一番大切な水田の如きは実に此の上も無い豊年の様子です。又豊年の様子では無く、確実に豊年と定り、此の二、三年前は少し大雨が降ると字は耕地に大水が出て作物を初め、色々の物など目茶目茶に、荒し荒されてしまったが、此の一年前、県の御骨折にて河川工事を致した上、御陰様にて昭和十三年度の如き、大水でも大した事も無く、又此頃の大雨でも少しも水は出づず、実に当字と致しては作物を初め、色々の物が大増産を益々見て居ります。(終)