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第6巻【近世・近代・現代編】- 第9章:戦争

第2節:戦争の記録

七郷村長市川武市と役場吏員から出征兵士への慰問文

外地で御奮戦の諸君、又内地で御奉公する皆さん、御元気のことと推察申上ます。
新聞ラヂオで報道さるる戦果の度毎に、我々は感謝と感激をすると共に、皇軍の労苦や如何と案じて居ります。
戦塵を洗ふ一時、塹壕の中で見る中秋の月、或は兵舎の窓から諸君は故郷を偲ぶでありませう。その七郷村は何の変りもなく一同元気です。枯影を慕ふ暑さも過去って秋風が西から吹き、心配した稲熱病も案外軽く済んで、青黄い稲穂が南に向って首を垂れ、もづの鳴く声も一きわ高く、栗の実の熟する秋の風景を呈して居ります。若人の心を集むる十三夜も今日です。一昨日来降り続いた雨も晴れて、雲足も早く青空となって名月が眺められます。
諸君の揚げた戦果に答えんと、全村民心を合せ一体となって、生活戦に、増産戦に、貯蓄戦に奮闘を致して居ります。諸君から御便り戴く度に返信は差上げて居るつもりですが、雑務に取まぎれ失礼したこともあると思います。御許しを願って、今度軍人援護強化運動の展開せらるヽに当り、隣組の慰問文を取纏めて村の近況と合せて報導し諸君の労を慰め致します。
本年の麦の供出割当二八〇〇石も美事に完遂。晩秋蚕も極めて成績良く、五二〇〇貫、一昨日出荷終了。今月三日大雨があったが本村は被害も少く、米も平年作は獲れるでせう。甘藷の供出割当十万貫餘、薪炭二十万束、藁工品一万八千貫の大任も果したいと考へて居ます。
国民貯蓄も十二万円(総額四十八万七千国債五万八千円)も、九月迄五万二千二百八二円各団体の総力で完遂の見込です。
青年学校の査閲も十月三日に宮前校で、宮前、福田、七郷の三ヶ村で受閲しましたが成績極めて良好(特に銃剣術)。体力検査の結果、弱者十九名が高見の明王寺で九月二十五日より十一月二十五日迄県民修練を行って居ります。体力テストも十月十六日に行なひました。今年は女子百餘名も行ひ、上級一名、中級廿二名、初級六十三名の良成績を挙げました。村のニュースも後便にゆづり、本日はこれで筆をたち、諸君の武運長久を吏員一同にて御祈り申します。
村長 市川武市 
助役 阿部宝作 
船戸恒作 
藤野菊司 
■田健吾 
馬場芳治 
杉■松雄 
馬場ミツ 
福島富  
小林政市 
安藤弘  

行政史料 1943年(昭和18)
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