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第6巻【近世・近代・現代編】- 第8章:女性の活動

第3節:法人組織

菅谷地区・七郷地区母子愛育班合同体験発表会(1965年)

乳幼児のおもちゃ

            吉田支部 荒井たか子

 私達が子供を育ててゆくために体のことばかりでなく、人格の形成という大切なことがあります。遊びは乳幼児の性格の形成にとっても重要な意義を持っていることも理解しなければなりません。遊びに道具である玩具はどのような役割を持っているのでありましょうか。藤野助産婦さんよりお借りした助産婦という本の中に日本愛育研究所心理部長升田俊雄先生の書いておられるのを紹介させていただきたいと思います。

 1) おもちゃの役割
(a)商品として市販されているもの
(b)周囲の親、その他が手作りで与えているもの
(c)子供自身がその環境から見出して扱っているものを含んでいる。
 aに属するものは、例えばデパートの玩具部で売っているガラガラや人形、積み木の類であり、折り紙やクレヨンのような材料も、すべり台のような運動遊具もこれである。
 bに属するものは親兄弟や幼稚園の教師、保育所の保母などが子供に与えるものとしている手製の人形や鉄棒などである。
 cは前の二者以外に乳幼児自身が自分の身近にあるものをおもちゃとして使う場合で、例えば乳児がもみくちゃにする新聞紙や幼児が人形に見立てて遊んでいる秋【ママ】や、泥んこ遊びの土、その他いろいろのものがある。これらは歴史的に概観すれば、cの類のあり方のおもちゃが、まず子供と共に存在し、b類のおもちゃが子供に与えるものとして工夫され、さらにそれが精巧になり、商品化されているものが、aの類のおもちゃとして社会に出現したといえよう。現在においては、おもちゃといえば商品化されたものばかりを指すことも多いが、手作りのものや、子供自身、環境の中から見出したものを忘れてはならない。このようにおもちゃを見れば、おもちゃは子供の遊びを助けるもの、遊びを発展させて子供を楽しませるものといろいろいえよう。そして乳幼児の場合、遊びは、子供の生活それ自体であり、遊びを通して子供の心身は発達するものであるから、その遊びを助長するものとして、どのようなおもちゃのあり方が子供の成長発達にとって好ましいかが充分に考慮されなければならない。知識をひろめるという観点からだけではなく、思考力を発展させるもの、情緒を豊かにするもの、社会性を伸ばすもの、運動能力を敏捷にしたり、体力をつちかうものなど、広い見地から教育的な効果があるものでなければならない。
 このことは前にあげた子供自身が見出す類の場合、周囲の大人が常に注意してやらなければならないし、手作りものも同様であり、商品としての玩具についても、その商品性を高めることのみに関心が注がれて、一見精巧なものが必ずしも教育的なものであるとは言えない場合もあるので、子供に与えるにあたっては教育的な効果の面から選択を必要とすることになり、それと同時に健康や安全にどのように影響を及ぼすとかいう衛生の面からの考慮も怠ってはならない。

 2) おもちゃは教育的に見れば、子供の遊びを助けるものでなければならないが、その遊びが成長するにつれて発達し、その様相を変えていくので、おもちゃを与えるについては、その心身の発達に即したものを選ぶ事が先づ必要な条件である。これには二つのえらび方がある。一つは与えるおもちゃの種類であって、ガラガラは0才児に、三輪車は3才〜5才児に向いているということであり、三輪車を満1才の誕生日に買って与えても、子供の心身はそれを乗りこなすまでには発達していない。心理学でいうレディネス(準備)ができていないのである。遊ぶことができるだけの準備ができてから、与えなければならない。そうでないと折角のおもちゃでも「ねこに小判となる」。逆にガラガラを年長の幼児に与えても見向きもしないであろう。それで遊ぶという興味をもつ時期がすぎてしまったからである。どんな年令におもちゃを与えるかは、発達の知識を必要とするが、子供が自然に遊んでいる場合、身辺のものを、どんなものをどのように使っているか良く観察することによる。ある程度の見通しはつくものである。
 もう一つの選び方は同じ種類のものを何を選ぶかという事である。例えば人形であるが、1才児に与える人形と、4才児に与える人形は同じものでは適切ではない。これもやはりレディネスによって遊ぶという原則に従うものであるが、1才児では人形を抱いて遊ぶのが精一杯である。そこで1才児には単純な抱き人形を与えるのがよい。ところが4才児になると、それでは満足せず着せかえ人形がほしくなる。人形にいろいろの服を着せたり、アクセサリーを持たせたりする遊びに興味を持ちはじめ、子供の手先も着せかえるだけの運動機能が発達してくるのである。この事も子供の遊びを良く観察することにより了解されよう。然しおもちゃによっては同じものでも子供の年令の長じるにつれ、違った遊び方をして楽しむものもある。例えばボールは0才児の後半から興味を持ってころがして遊ぶが次第に投げて遊ぶようになり、それも相手と投げあったり、規則に従った投げ方、受けとり方になったり、ついて遊んだりする。又積木も1才児には、つかんで楽しんでいるだけなのが、就学前の幼児になると随分優雅な形のものを作るようになる。おもちゃには、ごく短い期間しか子供の遊び相手にならないものがあるが、このように年令の長じるにつれてさまざまの遊びに発展できるものがあり、最初からかなり良い材質のものを選び、与えることが望ましい。

 以上のようなことを学びました。私達親にとっては経済上のこともあり、なかなか理想通りにはゆきませんがつとめて発達性に応じた適当な遊具を使用させるよう配慮しなければならないと思いました。

菅谷地区・七郷地区『母子愛育班合同体験発表会』資料 1965年2月15日
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