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第6巻【近世・近代・現代編】- 第8章:女性の活動

第2節:ボランティア活動

一歩通信

一歩通信 46号 1996・8・20 一歩の会事務局

 7月8日、定例会を施設見学に振り替え、参加者20名は雨の中を町のバスで出発しました。1日4か所と少々ハードスケジュールでしたが、他人事ではない思いの見学でした。

1 デイセンター・ウィズ(町内・鎌形)
 精神薄弱者*1の通所更生施設。定員35名で現在12名が通っている。養護学校を卒業した人たちが地域で普通に暮らすための訓練の場であり、地域活動の拠点となってほしいと施設長さんの説明。
 大きなガラス戸から四方が見渡せる清潔な室内、仰向けに寝ても眩しくない間接照明など、やさしさが伝わってくる施設である。昼食のメニューはレストランのイメージで好きなものを選べるというのもユニーク。

2 特別養護老人ホーム・らんざん苑(越畑)
 定員50名。家庭で介護が困難な寝たきりの高齢者の利用施設。一時的に利用するショートステイ(20名)や入浴、機能快復訓練、食事など日帰りで利用するデイサービスも整備されている。4月開園したばかりで最新の機能をもつ浴室はさすが。花の名のついた居室はどれも中庭に面し陽光がよく入る設計で、指導員の目が届くように配慮されている。
 準会員だった品のいいSさんが背筋をぴんとたててあの頃と少しも変わって見えない様子にお目にかかれたのは懐かしかった。

3 春日園(川本町)
 身体障害者授産施設として昭和52年(1977)県下初に設立された。一般企業で就労の困難な障害者が自活に必要な訓練の場として通っている。木工パズル、天気工事部品加工、ダスキン選別処理など単純とはいえ障害をもちながらの作業は大変だろうと憶測する。年間の工賃が書き出されていたが、それも励みになっているのかもしれない。工房で焼いた出来たてのパン、クッキーを買って昼食前の空腹をなだめたが、また買いに行きたいくらいおいしかった。(鬼の家で売っているとか)

4 老人保健施設・鶴ヶ島ケアホーム
 一般病棟57床、痴呆*2専門棟50床の入所施設で一日32人のデイケアと痴呆症老人のナイトケア(16時〜20時)も行う。また市の委託で50名ほどの配食サービスも行っている。
 施設説明で通されたフロアーはグランドピアノをはじめ楽器が揃いカラオケ施設も完備。目を引いたのは壁の絵画と円形のテーブル(みんな顔を見える)。笹の葉に揺れる、願いをこめた短冊など、楽しいムードの第一印象であった。
 二階の一般棟では手仕事に余念のない人たちが、やっぱり円形のテーブルを囲み、その周囲にテレビをみたり、私たちを目で追ったりしている人たちが、大勢なのに奇妙な静けさでそれぞれに座っている。三階の痴呆専門棟はお喋りをする人もいて何となくざわついている。この専門棟は県内初の施設である。
 帰りぎわにデイケアのお出迎えか、家族に手をひかれたお年寄りに出会ったが、嬉しそうに見えたのはホームの一日が楽しかったのだろうか。そう祈りながら中間施設と言われるわけがはっきりしてきた。

見学後記 若手と大先輩の二人から感想をきいたところ、老後はやっぱり家族に従わないと……ネ。ケアホームでも100パーセント家族の意向ということだった。老いては子に従いか。
 しわよせの遅れで、鶴ヶ島は「紅琳」で待望の昼食をとったのは予定より1時間も遅れてしまった。二回に分けてゆっくり見学したほうがよかったかもしれないと反省も残る。
 ともあれ昨年度の車椅子体験と併せ、福祉の現実に一歩でも近づいたとすれば有意義な一日だったと言えるだろう。

 今月は見学特集とします。したがって7月の「……集い」は次号にまわしますのでご了解ください。では9月の定例会までお元気で

*1:知的障害者。「精神薄弱の用語の整理のための関係法律の一部を改正する法律」(1998年9月18日成立、1999年4月1日施行)により、「精神薄弱」という用語が「知的障害」に改められた。
*2:認知症。2004年12月、に厚生労働省の『痴呆』に替わる用語に関する検討会によって、「認知症」への言い換えを求める報告がまとめられた。「(1)「痴呆」という用語は、侮蔑的な表現である上に、「痴呆」の実態を正確に表しておらず、早期発見・早期診断等の取り組みの支障となっていることから、できるだけ速やかに変更すべきである。(2)「痴呆」に替わる新たな用語としては、「認知症」が最も適当である。(3)「認知症」に変更するにあたっては、単に用語を変更する旨の広報を行うだけではなく、これに併せて、「認知症」に対する誤解や偏見の解消等に努める必要がある。加えて、そもそもこの分野における各般の施策を一層強力にかつ総合的に推進していく必要がある。」そこで、行政分野、高齢者介護分野において「痴呆」の語が廃止され「認知症」に置き換えられ、各医学会においても2007年頃までにほぼ言い換えがなされている。

一歩の会『一歩通信』46号 1996年(平成8)8月20日
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