第6巻【近世・近代・現代編】- 第8章:女性の活動
菅谷地区婦人会『つどい』創刊号1958
随想
遠山 杉田な美
生々しい爪跡を残して立去った廿二号台風、今宵は又仲秋の名月、考えると自然のおそろしさそして自然の美しさ、只一しをと言いたいですね。以外に暑かった夏も過ぎ、考えて見ると五月の蚕、麦、田植、そして再び夏秋蚕と息つく暇も無い私達でした。やれやれ一息と言った所です。黄ばんで来た穂波を眺めて居ると忙しかったあの頃が夢の如く思出され感慨無量です。
菅谷地区婦人会『つどい』創刊号 1958年(昭和33)11月
農家はこうも忙しく働かなければならないのでしょうかね。苦しみ働いただけの良き収益が有ればともかく、現在は全く農家経営も考えねばならない有様です。考えてもどうにもならないと思いながら、毎日の生活にもっと魅力を持ちたいものです。計画的に仕事をしたい。それには月一回或いは二回(農繁期は別として)農休日を定めたらどうでしょうね。私達主婦は家庭に入れば洗濯、裁縫なんでも山の如く仕事は有ります。外の仕事は忘れて家の中の仕事をゆっくりする。或いは行楽季節であったら家中で出かけ一日を楽しく過す。或いはテレビでも見る。此の様に自由な一日を得られる事が出来たらどんなにか幸でしょうね。味気ない現在の生活がそうした事によって明日への仕事の能率が上り、自然、計画的になるのではないでしょうか。子供達の為にも休みには勉強しても良いでしょう。よく「負うた子に浅瀬を教わる」とか言いますけれど、それでは困ると思います。子供と共に学びあらゆる面に知識を向上させて行きたいと思います。休みもなければそんなことも出来ませんね。あったとしたら一日が良きお母さんになれるのではないでしょうか。無理な願いかも知れませんけど密かに願っている私です。
婦人会の大きな力で私の願がかなったなら、どんなに喜ばしい事か。外は中秋の名月、十時が鳴って居ます。降る様な虫しぐれが何か物悲しく聞こえて参ります。